183 最初の話題なんて次第にどこかへ消えるもの
「しのぶちゃんひかりちゃんたけるちゃんじゅんちゃん、せみとりいこー!」
忍でーす。
菜美の発音が大分しっかりしてきました。
「何でお兄ちゃんたちが後なのかな~? 菜美ちゃん~」
「にゃんとなくっ☆」
にゃんとなくこの子は強くなりそう。
「神谷網持ってきたんだっ!」
「神谷、蝉は手で捕れるよ」
え? 捕らない?
「網使いたい」
その気持ちは分かる。振り回すの楽しいよね!
……あれ、違う?
「兄ちゃん達は?」
「岳お兄ちゃんはお友達と遊んでくるって~。純お兄ちゃんは~……お姉ちゃん知らない~?」
「台所に居たよ。アイス食べて……あっ、今の無し」
『食べよ~!』
今の無しって言ったじゃん! いや、効果ないだろうな~とは思ったけど。
次に冷凍庫開けたらアイスなくなってるかもしれない。
よし、食われる前に食うべし。どっかで聞いた誰かの教え。誰だったかなぁ。
「純兄ちゃん食べていーい?」
「なみもなみも!」
「私も~」
あ。食われる前に食うべしの前に食われたら意味がない。
自分で言っといてなんだけど意味分からん。今の言葉。
「あたしの分残しといてよーっ!」
『残念でした~』
「はぁっ!?」
もう無いとでも!?
「大人気ブドウ味は売り切れで~す~」
「金取るの?」
「取らないよ~。頭固いなぁ~。石頭だな~。殴っても痛くない~?」
何か酷い言葉の羅列が聞こえる気がする。
「って痛い痛い痛い。こら光、叩かないの」
「だってお姉ちゃん岳お兄ちゃんたまに殴ってるじゃん~」
「それはともかく」
「話変えないでよ~」
いやだって。それよりアイス食べたいし。
……本当にブドウ味無くなってる。
でもっ。あたしは見た!
昨日、おかーさんが美味しそうなチョコアイスを冷凍庫の奥深くに隠すところを!
カップのと箱入りのコーンアイス。
カップはとったのばれるからコーンアイスだね、やっぱり。
「じゅんちゃん、ちょーだい!」
「あ? 菜美も今食ってるだろ」
「じゅんちゃんのもたべたい! そっちのほうがおいしいでしょ!」
菜美……何で分かった。
純兄の食べてる、んでもってあたしも今食べようとしてるコーンアイスが数十円高いことを!
買ったのあたしじゃないから多分だけどね。
「何でそう思う?」
「いちごかにくはいってるもん! チョコレートだもんっ! ぱりぱりのチョコのなかにアイスクリームのチョコはいってるもんっ!」
菜美、どうやって調べた。
純兄はお行儀の悪いことに立って食べてたからコーンの中見えないはずなのに……。
「えへへ、なみ、はないいのー」
鼻がいいとかいう問題じゃないでしょ!
そういえば。蝉取りはどこ行った?