177 兄をシメよう
「にーちゃんが壊れた」
「変なのは前からじゃ無かったかな~」
「光に言われたかねーと思うけどなー」
一応常識人かも知れないかもしれない人だった気がしないでもないのにねー。
あ、自分で言ってて意味分かんなくなった。
忍でーす。
最近純兄が人間離れしたことをするようになったのでちょっとした会議を開きました。
会場、あたしと光の部屋。
純兄は隣の純兄と岳の部屋で勉強中。純兄がよっぽど集中してなかったら聞こえるんじゃない?
その辺は一応考慮して小声だけど。
「壊れたトコその一。何か変な穴開けてた。おかげでオレの机はきれいになったけど」
何か必死に片づけてたもんね。何があった。
「壊れたトコその二~。なんだか霊力操れるみたいだね~」
りりは結局どうしたんだろうねー。
「壊れたトコその三」
「え、ほかにあったっけ?」
一応あるよ。
「がり勉」
『あぁ~』
おぉ、納得した。
前はテスト前しか勉強して無かったのに、夏休みに入った途端急にし出した。
「でもそれって受験生だからじゃ……」
はれ?
「なっくんもいつもよりやってるらしいよ~?」
『おかしいのはねーちゃん(お姉ちゃん)の方じゃね(ない~)?』
え。
あはは。
うん。
「それはまぁ置いといて」
「置いとくべきなのか?」
「置いとくべきじゃない気がするね~」
置いといて。ちゃんとやるから! 歴史が嫌でほっぽってるんだけだもん!
……ダメじゃん。
「話戻すよ! で、いったい純兄はどーしたのでしょーか」
『うーん……』
「あ、あれじゃね? ほら、妙羅がにーちゃんに仕事手伝わさせるとか言ってたじゃん」
『あ(~)っ!』
それだ。絶対それだ。
そのついでに妙羅が何か変な事吹き込んだな!
「その仕事は全部放置してるけどな」
『ぎゃあっ!?』
「…………」
何か反応してよ。怖いよ? 無言で部屋の入口に立たれても。ねぇ? 純兄。
「ん。そう言う事だ」
『どう言う事!?』
説明足りん!
「何で小声で話してたのに聞こえたの!? 壊れたトコに追加っ!」
地獄耳は元からだからー……んと、超絶地獄耳!
「え、あれ小声だったのか?」
……あー、うん。普通に話してたね。
小声のこの字も無かったね。
「と、とにかく! にーちゃん説明! こないだはもやんされたからな!」
もやんされたて何さ。
「えー」
『えーじゃない!』
「んー」
『んーでもない!』
あ、この辺も壊れてきたかも。隙なかったのに。見つけらんなかっただけな気もするけど。
「……ん。企業秘密」
『何の企業だよ!』
十五にして仕事人間とかよしてよ?
……うー、あたしまだ十四なのに何で純兄は十五なんだろ。
幼稚園の時の疑問がぶり返してきた。いや、分かってるけどねー、分かってるんだけどね。
「んー、死神のという事で」
「やっぱり人間離れしてる! どうしよねーちゃん!」
「よ、よし。まずは妙羅をシメるとこから始めよう!」
「無理だから」
やる前に諦めるのは……何だっけ。
「んじゃ説明寄こせ~!」
ビシッ……と決めてるのに口調でいまいち決まらない光ちゃんでした。
「え」
『えじゃなぁああああい!』
もうこのループは面倒になってきたので純兄をシメる事にしました。
……あれ、何か無謀な事してる気がする。
「ん、ん、ん。よし」
おー、抑えられた。両手片足で抑えられた。
「岳、大丈夫?」
「鳩尾入った……」
ドンマイ。
「んで、誰をシメるって?」
『ごめんなさい』
「よし」
あっさり。
「って、おーい。説明は」
「次回」
言っちゃいけない事をさらりと言ってた気がする。