171 お父さんの扱い
「わわわわわっ! やめてよ!」
「やだ」
「やだじゃなぁい!?」
「そぉ~ら、お髭じょりじょり~」
「いたぁい!」
あはは、春ガンバレ。
夏だ。
「拷問ね……」
「んじゃお母さん、助けてやれば?」
「わざわざ助けるほどの事でも無いわ」
拷問っつったくせに。
「もぉおおおおおお! やめてよ!」
「何でぇ。お母さんにやってあげたら喜ぶのに」
「イ・ヤ・よ!」
「あははははははは!」
親父ってば、フリーズしてやんの。
「ちょっと夏、黙ろうか?」
……口つまんだ。
イコール? 俺の笑を邪魔しやがった。
「ちょっと逝って来いっ!」
「ぐはっ」
蹴って―、殴ってー、足払ってー。
体育の授業にある柔道ってこのためにあるのか。
「お兄ちゃんって……笑ってるとこ止めると怖いよね」
「そうね」
いや、俺はお母さんの方が怖ぇと思う、
「ところでお母さん、お父さんって何が苦手?」
「そうねぇ……」
あ、お母さん協力すんの?
「パサパサしたかぼちゃの煮物が嫌いね」
「へぇ~」
それは俺も嫌いだな。
「後ね、猫が苦手」
「そなの?」
「秋ぃ!」
あ、事実なんだ。
「じゃあここは忍ちゃんに手伝ってもらおっ!」
あー、春も春で大概怖ぇかも。
何が怖いって、人に仕返しする計画立ててる時にすっげぇ楽しそうになるのが怖ぇ。
「ちょっ……と、夏。首、首……絞まってる」
「絞めてんだよ」
「止めなさい」
親父って何気に腕力強いから困る。
いや、別にそこまで困らねぇけど。
「そりゃっ、お髭じょりじょ「来るなっ!」今のは酷くない?」
え、だって……。
「秋、前から気になってたんだけどこっち来るなり俺の扱い酷くなって無い?」
つい純たちに影響されて?
「気のせいよ」
き、きっぱり……。
「んー、そう?」
「そうよ」
「ふーん、そうなのか……」
納得するのか!?
「な?」
あ。してなかった。
「ところで、夏休みの宿題は進んでるの?」
「ぜぇんぜん」
小学校の頃なんか、俺は宿題を期限直前になってもやらない派だったからな!
お母さんに滅茶苦茶怒られたけど。
「さっさとやりなさいよ」
まだ夏休み始まったばっかなのに……。あ、もうすぐ一週間経つ?
「ウチは今自由研究のネタを考えてるよ! テーマは『お父さんに仕返しするにはどんなのが一番効果的か!』」
研究でいい、のか? ある意味研究だけど。
「やっぱ俺の扱い酷くなってる!」
「気にしないの。ね?」
「うぅ……これがひどい扱いしてる人の言葉じゃ無かったら嬉しいけど……」
顔はちょっとほころんでるくせに。
その頃、高山家。
「おとーさん、名前何だっけ?」
「酷っ!?」
「気にしないの~。ね~?」
「うぅ……じゃあ凛、俺の名前は?」
「………………」
「……………………ひどい」