17 まだ寒いのに
「純兄ー行くよー」
なぜ俺が待たせてたみたいな言い方をする。
「待たされたのはこっちだ」
「知ったことか!」
それで済ますな。
純だ。
今、学校に行くため、外に出たところ。
大分温かくなってきたとはいえ、まだ寒い。
「寒い寒い寒い寒い寒い!」
「大声で叫ぶな、五月蝿い」
「暑い暑い暑い暑い暑い!」
「叫ぶなと言ったのが聞こえなかったかコラ」
「あ、余計寒くなるから止めろって意味じゃないのか」
いつ誰がそんなことを言った。
「にゃ~」
「にゃ~」
……毎朝の恒例行事。忍が猫を呼び出す。
寒い中待たされるこっちの身にもなって欲しい。
「ナ~ん」
「ナ~ん」
……お?
「珍しく短かったな」
「皆忙しいそうな」
猫って飯食って寝てるだけじゃねぇのか? 昼間は。
あ、ちなみに忍は猫語が分かるらしい。
小っこい時から猫に話しかけてたからか?
「……ひーまだー」
「歩いてるだろ」
「足以外が暇」
「寝てろ」
「ぐぅ」
ホントに寝るなよ。
目は半開きだから意識が半分ぶっ飛んでる程度だろうが。
「半寝」
「……それ言ってる時点で寝てねぇだろ」
「ん~……ま、それもそっか。……んむ?」
伸びをしたと思ったら、空中を見て固まる。
「純兄ー、あっこ何か居る? 何かちとぼやけてんだけど」
……あっこ、を見てみたら……居た。
面倒そーなのが居た。
面倒そーなの=幽霊という式。
どー言うわけか俺は物心ついたときからこういった類のものが見える。
忍や岳はぼやけたものが見える程度。
光は気配を感じるだけなのに俺にははっきり見えるんだなこれが……。
そいつ等に会っていい思いをしたことは一度もねぇ。
「居るんだ、やっぱり」
「居るけど……ほっといていいか?」
「どんな奴?」
「落ち武者」
「よしほっとこう」
『ちょっ!? 待て待て待て待て待てぇい!! 何故わしをスル「面倒だから」酷い……』
面倒なものはほって置くのが一番だ。
前、下手に関わった自殺した爺さんの霊に延々四時間、人生論とやらを語られたからな……。
あれは地獄だった。
「純兄、ごろごろ聞こえるけど何言ってんの? 落ち武者」
「何故スルーするかと」
「可愛くない。めんどくさい。可哀想に思えない」
あ、石化した。
「後遅刻するのはごめんだしね。……あ、後」
一息すって……。
「オバケの旬はまだまだ先だしね」
がらがらがら。
崩れた。
にしても旬って。おい。
食う気か?
『わ、わしは旨くないぞ!!』
「るっせぇ。とっとと成仏しやがれ」
ってか復活早ぇな。
『一人では寂しいではないか!』
気色悪ぃ。
「そこらに漂ってる霊でもいっしょに連れてけ。じゃな」
『わしをほっとく気か!?』
「最初にそう言ったろ」
『おぉ、そういえば』
ったく。結局関わっちまったな。
早めに出てて良かった。
『……言っておったか?』
……キレていいか?
とりあえず、周りに忍以外誰も居ないことを確認してとび蹴りをしておいた。
後日、落ち武者はそこら辺のすずめの霊と成仏したようだった。
……結局一人で行かなかったのかよ。
昨日の答え。
『絶対鮇烏賊?』→『絶対いわないか?』で、絶対言わないか? でした!