165 妙羅の頼みごと
「純、ちょっと手伝え」
「第一声がそれかよ」
「何か問題があるか?」
「親しき仲にも礼儀ありとか言うじゃん」
「知らん」
知っとこうよ。
忍でーす。
なんかもう、扉のとの字すら知らないよーとでも言うかのように、まあこれがいつも通りだけど。妙羅が入って来ました。
「何の手伝いだ?」
「来てから説明する」
急ぐの?
「いや、ここでしろ」
「来てからだ」
「ここでだ」
「来てから」
「ここ」
「来てから」
「ここ」
「来てから……って、話が進まんだろうが」
気付くの遅っ。
「ん、ならあきらめてここで説明しろ」
「したら絶対に手伝えよ」
「聞いてから決める」
「なら来てから説明「しても結局手伝わせるんだろ?」当然だ」
当然なんだ。
「……よし、忍行って来い」
『何でそうなる(の!?)』
おかしーよー、なんであたしに振るの!?
「私は純に来いと言った」
「……なら、聞いて忍でも出来そうなら忍にやらせる」
「妹はあてにならん」
「今さらっと酷いこと言われたよ!?」
ろくに話したこともないのに!
「あぁもう、いいからさっさと言え」
聞かないんじゃ無かったの?
「俺は早く数独の続きがした……チッ」
「……妹、何故純は今舌打ちをした?」
え、こっちに振るの。
「んっとー、あ、きっとタイマー止め忘れたんだ。パズルする時いっつも計ってるから」
「そうだ。テメェが突然入って来るから止め忘れた」
最速記録が出そうだったのにね。
「私のせいか?」
「そうだ」
「はっ」
あ、何か純兄の心の声が聞こえる気がする。
「(こいつ、殴りてぇええええええええっ!)」
前言撤回。叫びでした。
「で、結局何なの?」
「最近入って来た部下の取り扱いが難しくてな」
「帰れ」
うあ、バッサリ。
「部下の管理が出来ないとか俺に言ってもしょうがねぇだろ」
「そいつらの名前は斬、天、剣というのだが?」
…………そりゃー取り扱いにも苦労するでしょうね。
「そいつらがお前の部下? 四月に入学したとこだろ?」
「実力があれば飛び級だろうがなんだろうがするからな」
流石と言うか何と言うか。
つまりあの三人、実力があったって事?
ある意味あるけど。
「まぁガンバレ」
「何のために来たと思っている」
「さぁな。数独の邪魔をしにか?」
根に持ってる……根に持ってるよっ。
「いや。取り扱い方を聞きに来た」
「説明書があるとでも思ってんのか?」
「無いのか!?」
驚くところ!?
「あるのか?」
妙羅が懐から取り出しましたるは。
『部下の取り扱い説明書 第一巻』
……あるんだ。
何巻まであるのこれ。
「こんなのもある」
『後輩の取り扱い説明書 番外』
番外って!?
「欲しいか?」
「生憎後輩がいない」
「そうか。まぁ必要になったら言え」
別にいらないと思うんだけど。
「分かった。じゃあもう帰れ」
「何をしに来たと思っている」
「数独の邪魔」
確定?
「で、取り扱い方……口頭でもいい」
「光ーっ! 居るか?」
「純お兄ちゃん~! 食べて食べて~。あ、妙羅さんこんばんは~」
「妙羅さまだ」
「は~い~」
あっさり受け入れるな!
「……下の妹はいい子だな」
「手ぇ出すなよ、ロリコン」
この人ロリコンなの!?
「一辺冥界に逝くか? シスコン」
シスコンじゃないと思うけど。
「光、手に持ったそれ、妙羅に食わせてやれ。喜ぶぞ」
「了解~。はいどうぞ~」
光、何作ったの? クッキー? ゼリー? とにかく不気味な物体。
「……今の人間界にはこんな食べ物があるのか?」
この人、何歳?
あ、凄い、食べた!
「うっ……」
「ドクダミ入れたの~。これで妙羅さまも健康に~」
『なるかっ!?』
むしろ毒だよねっ!? 体に悪いよね!?
「……斬に解毒薬でも貰おう」
「悪化させられないようにねー」
「………………」
あ、黙って出てった。
死神撃退!
あれ、何かこれって罰当たり?