159 李も桃も桃のうち
『すもももももももものうち~』
「……んで?」
すもも美味しいなーって言いたかったんだけど。
「美味しいね~、お姉ちゃん~」
「うん」
光は分かってる!
「んー……。わっかんねーなー。すももって皮と種の周り酸っぱくね?」
『それも含めて美味しいんじゃんか~』
「ハモって言われても……」
狙ったわけじゃないもん。
「なー、にーちゃんどー思……って、いねーし!」
「純兄なら妙羅に拉致られたよ」
「拉致!? 何で!?」
年下のくせに呼び捨てにするのは生意気だーとか、何とかかんとか?
確かそんな理由。
……妙羅って何歳なんだろ。三十路超えたおっさんだったりして。
「岳お兄ちゃんは何ですもも嫌いなの~?」
「んぁ? だって酸っぱいし。小っちゃいし。オレは断然桃派だ!」
桃も美味しいよね。
「すもももももももももものうちだよ~」
「もが一つ多かったぞ!?」
「違うよ~。二つだよ~」
「分かっててやったのかよ!」
何故に。
「……そーいやねーちゃん、それ、今取ったヤツ。何個目?」
そんなに食べてないよ?
んーっと……
「十個目くらいかなっ☆」
「二けたぁ!?」
美味しいんだもん。
「お姉ちゃんずるい~! 私まだ九子だよ~!?」
「何がまだだっ!?」
「大じょーぶ、まだあるよ」
「もう食わんでいいだろがっ!」
『え~』
食べたりなぁい。
「えーじゃなくて!」
「すももは別腹という言葉を知らんのか~!」
「知るか!」
えぇっ!?
「何で二人してんな驚いた顔になんだよ!?」
『なんとなく(~)』
「リアクションまでなんとなくするなぁ!」
喉潰れるよ?
「岳~、外まで声響いてるわよ~」
お帰りー。
「あ、母さん、ちょっとさー、ねーちゃんと光に何か言ってやってくれよ。もうすもも十九個……あっ、今に十個になった。が、食われちゃってんだぜ?」
「えぇえええええ~っ!?」
岳の声よりおかーさんの声の方が大きい気がする。
「忍~、光~」
『……?』
「これから十日間すもも無し~!」
『え~っ!』
岳、『どーだ!』みたいな顔でこっち見ないの。
後でげんこつ十発ね♪
「せめて五日~」
「だめ~」
半分になってるし。
「六日!」
「だぁめ~」
「七日~」
「だ・あ・め~」
「八日!」
「め~」
「九日~」
「ふ~ん~」
「十日! って最初に戻ってんじゃんか!」
むぅ……これなら。
「あ~、盗み食いしたら倍々に増やしていくよ~?」
『あぅっ!?』
「って考えてたのかよ!」
当たり前でしょうが!
あぅ~、すもも~。