156 屋根、もとい屋上
「じゅーん! じゅーん!」
六月?
「純!」
違うよね、やっぱ。
忍でーす。
「何?」
「ちょっとこれ引っ張り上げて!」
はしご? しかもでかっ。
「えー」
「えーじゃなくてだな!」
「いくら?」
いくらって。
「金とるのかよ!」
「いや、小遣い」
「同じだぁっ!」
おとーさんよく叫ぶなぁ。
明日声かれてても知らないよ?
お客さんの相手できなくなっても知らないよ?
「いいからこれ引っ張り上げろって!」
「いくら?」
何か無限ループしそう。
「だぁもう! 十円!」
あ、あっさり折れた。
「ん」
あ、十円で納得した。
まぁ、はしご引っ張り上げるだけだしね。
無いより良いじゃん思考?
「買いたてか」
「純兄純兄、このビニール破っていいよね」
「そりゃいいだろ。出さなきゃ使えねぇし」
ビニールを思いっきりびりびりーって破くの、何か気持ち良くない?
「わ~、大っきい~」
「何これ何これ! すっごーい!」
「……どーん」
美代さん、何故に効果音?
「うぉっ、でっけー」
「あれ、岳何持ってるの?」
「スノコ。父さんが持ってけって」
人使いが荒いなぁ。
「よしっ、屋上に上ろう!」
おとーさん上るの早っ。
さっきまで庭にいたのに。
「……アホと煙は天のぼる」
「純、テンション下げるような事言わない」
「ん? 前に自分で言ってた事じゃねぇか」
「…………いや、まぁ言ったけど……」
溜息吐かないの。
「……あと、屋上というより……屋根じゃない?」
「ホントだね~、みーちゃんの言うとおりだ~」
「ねぇねぇっ! 上るなら早く上ろうよ、おじちゃんっ!」
肩落とさないの。
「父さん、このスノコどーすんの?」
「屋上は滑るから、敷いとくんだよ」
あくまで屋上って言うんだね……。
「……押し入れスノコを?」
「何考えてんの」
「大丈夫だ! …………多分」
最後にとてつもなく不安になる一言が付け加えられてた気がするんだけど。
「みょーら! これ美味しいでしゅよ!」
「ホントだー」
「塩かけたらもっと美味しいでした!」
「だ・か・ら、勝手について来るなと言っている!」
あれ、なんか今一瞬にしてプランターのキュウリが五本くらい消えたような。
んでもって向こうの方に子供×2と耳がドでかいチビがぶっ飛んでるような。
さらに何か和服の男がそれを地面にたたき落としてるような。
……気にしない方向で。
「おーい、純、具合でも悪いのか?」
「ある意味……。俺部屋に戻る」
「どういう意味? ……具合悪いなら寝とけよー」
「うん……」
ぜっったい原因妙羅だよね?
「じゅ、純が素直だ……!」
「父さん感動するレベルが低い」
「純お兄ちゃんってたいてい素直だよね~」
そーかなー?
「うぅっ。気を取り直してっ! 屋上上るぞ!」
「……気を落としてたの……ひーちゃん父上、だけ」
「うんうん!」
「うぅっ!」
いちいち泣かない!
ってか、泣けてない。
「うぉーっ! たっけーっ!」
「そりゃそーだよ岳くん! 屋上だもん!」
「オメーも大概テンション上がってんじゃねーか!」
「当たり前でしょ!」
うーみーはーひろいーなー……もとい。
そーらーはーひろいーなーおーっきーいなー。
何か普段建物に遮られてるだけに余計大っきく見える。
あたしん家、山の途中にあるしねー。
回り家ばっかだけど、しっかり斜面ある。下校時キツイ。
「みーちゃんも上がっておいでよ~」
ふるふるふる
「高所恐怖症~?」
こくっ
って、喋ろうよ。
「ベランダは大丈夫なの~?」
「……!!」
ありゃ、一瞬で中に入っちゃった。
気付こうよ! ベランダってこと。
「やっほーっ!」
「恥ずかしいからやめなさい」
「うん、ウチもやってから気付いた」
顔赤いし。やめときゃいいのに……。
「おー、何々? 屋根上ってんの?」
「なっくんも来る? 止めとく? はしご怖い?」
「うん、怖ぇ」
あら、あっさりと言ったね。
なっくんね、小っちゃい頃にはしごで遊んでて、足滑らせて落っこちちゃったの。
それ以降はしご恐怖症だって。
高所恐怖症じゃないんだー。
「こっちウチん家だよ! 行こ!」
「お~!」
行く、というか、上ってるし。
なっくん家の方が斜面の高いとこにあるから……。
「ここで天体観測とかしたいなー」
「すぐ飽きる癖に」
「うっ」
あれ、図星?