155 暗記、暗記、暗記
「推古、舒明、皇極、孝徳、斉明……えーっ……クソッ次何!?」
「天智」
「それだぁっ!」
忍です。
どーゆー訳か岳の『天皇言えるかな』に付き合わされています。
「覚えてどーすんの、これ」
「せんせの前で修也と言ってく!」
「で?」
「多く覚えてた方が勝ち!」
……それだけ?
「修也には負けねーっ!」
おぉー、アニメか何かだったら後ろで火がメラメラ燃えてそう。
「という訳で、推古、舒明、皇極、孝徳、斉明、天智、弘文、天武」
ほんっとに、勝負以外にどこで使うんだろ……。
「修也って言うと……前に純兄とナンプ○してた子?」
「持統、文武、元明……あぁもう! 集中してたのに!」
「ごめん」
「許す!」
うわ、あっさり。
「表貸してくれてるのねーちゃんだし」
うむ、感謝せよ。
……流石にこれは声に出せない。
「えぇーっと、次は……元正で、聖武で……えーっと」
「孝謙」
「それ!」
よく覚えたなー。いや、完全に覚えてるわけじゃないけど。
「ヘルクレス~、牛飼い~、竜~、猟犬~」
「……光は何やってるの、星座早見盤なんか持って」
「星座覚えるの~」
……何か覚えるのが流行ってるのかな。
「淳仁」「大熊~」「称徳」「子獅子~」「光仁」「獅子~」
頭眠くなってくる……。
「よ、忍」
「あ、なっくん。また不法侵入した?」
「いんや、今日は珍しく玄関から」
自分で珍しくって言った……。
「純兄知らない?」
「何か変な小っこくて重いのに絡まれてる」
……一t法師? まだ居たの? 八つ橋どした?
「んで、俺は打ち出の小槌を探して旅をだな……。引かんとって」
だってぇ。
「打ち出の小槌ならそこの神社で売ってたよ~」
「マジ?」
「マジ~。小っちゃくて可愛いの~」
キーホルダーか。本物かと思ってびっくりしちゃったよ。
「ところで、岳は何やってんだ?」
「歴代天皇覚えるんだって」
「天皇? 何でまた……あー、なんとなく? やっぱ」
おー、流石、よく分かってるねー。
「でも違う」
「嘘っ!?」
何故にそこまで驚かれにゃならんのだ。
「俺は元素覚えるのなんとなくだったぜ?」
「誰もそんなこた聞いてない」
って言うか、元素何て皆覚えてるじゃん。理科で、カルシウムまでとちょっと。
「元素、全部覚えるの結構大変だったんだけど」
「ぜんぶ!? 百ちょっと!?」
「そーそー」
疑いの眼差し。
「……水素ヘリウムリチウムベリリウムホウ素炭素窒素酸素フッ素ネオン……」
証明?
「……マンガン鉄、コバルトニッケル銅亜鉛、ガリウムゲルマニウムヒ素、セレン、臭素……」
長いなー。
数えてたら、これでまだ三十五?
「……ハフニウム、タンタルタングステンレ二ウムオスミウム……」
早口なのに、長いなー。
「フェルミウムメンデレビウムノーベリウムローレンシウム……」
ローレン氏、生む? すごいねー。
うぅ、まだ終わらないー。数えるのは七十個目で止めた。
「……ウンウンオクチウム! ぷはっ、息キツイ……」
「じゃ、やらなかったら良かったのに」
「忍が疑うから」
あ、あたしのせいにしたっ!
「あはははは」
何で笑ったの、この人。
大股で一歩後ずさり。
「いや、おまーな……」
何か怖くて。