151 テストとテストと死神さん
「せーのーでっ!」
んあ?
昼寝してたのに……ねーちゃんの声で起きちまった。
岳だぁ。
「うあ、うあ、うあ! 純兄に音楽で負けるとは!?」
「……英語、一点差……勝ったはいいけど、一点差かよ……」
んー、テストか?
「見せて見せて~」
「光、いつの間に……」
今来たとこだぞー?
「うわわ~! お姉ちゃんもったいないよこれ~!」
「光、オレもオレも」
えーっと、あ~、一番最後の楽譜写しのとこ?
……確かにもったいねー。
だってな、だってな?
終止線が縦線になってるし、四分の四拍子の上の四が途中から書かれてねーし……。
a tempoが、a tenpoになってるし……。
「良かったね~、純お兄ちゃん~。忍お姉ちゃんがうっかり者で~」
「あぁ、たしかに」
「良くないもん!」
んな事言っても。
「にーちゃん、オレ中学のテスト0点取る自信が出てきたぜ!」
『威張るな』
にゃはは……。
「英語は~?」
「見ーしてっ」
うぉぅ、読めねー。
よし、中学なったら先生に言ってやる!
日本にいて英語なんてどこで使うんだ!
外国人に道聞かれたってこう答えりゃいーんだ!
アイドンノゥ。
完璧。
「あ~、これ分かるよ~! プランでしょ~」
「惜しい! それはプレイ!」
「むぅ~……これは~……セエン~?」
「シーンね!」
えぇーっ、だってseenだぜ? セエンとしか読めねーじゃん!
ローマ字読みだけどさー。
「これは分かるぜ! 五だ!」
「数字だから! 読めないとまずいから!」
だってここしか読めねーし。
「ずいぶんと騒がしいな」
「……妙羅……ほんっとにお前、置物なんだな」
置物?
「何だこれは」
「読めるか? 和約してみ」
「……マークは映画を見たことが無い」
おぉ、すげーっ!
死神って英語もできるんだ!
「人の名前からして違うな」
違うのかよ!?
「マイクは映画を二度見たことがある、だ」
「で、貴様は何がしたいのだ?」
「自分より上の奴をからかうって面白いもんだぜ」
「……これはからかわれているのか?」
激しくビミョーなとこだな。
「そうだな、馬鹿にしているということにしておく」
「純、表に出ろ」
あ、怒った。
「めんどくせぇから今度な」
にーちゃんの今度ってぜってーこねーぞ!
先にめんどくせぇがついたときは特に!
「妙羅先輩っ! 大変でした! あ、未理阿ちゃんでした!」
わざわざ言わなくていいから……。
「霧瑠依くんでしたー。妙羅先輩ー、大変大変ー」
「貴様等はいったいいつ学校に行っている?」
おめーこそ。
『そこんとこどうでもいいのでしゅ! みょーら、お仕事でしゅよ!』
仕事と聞いてめんどくさそうな表情になるあたり、にーちゃんの同類なのか?
「何だ」
『んとでしゅねー、ユーレイの保護でしゅ』
「保護? 成仏させろではなくてか?」
『んとでしゅね、どこかの誰かさんのうっかりミスで死なせちゃった人でしゅから』
おいおいおいおいおいおいおい!?
うっかりミスって!? うっかりミスで死なせちゃったとか言わなかったか!?
「そのどこかの誰かさんを調べておけ」
『はいでしゅ!』
……耳で走ってるのに、なぁんであんなに速いんだろうなぁ……。
「そういう訳で、仕事が入った」
「とっとと行って来い。戻ってこなくていいぞ」
「はは」
今の笑いってなんだろ……。
「忍お姉ちゃん~、落ち込まない~、落ち込まない~。次勝てばいいでしょ~」
「……うぅ」
ねーちゃん……静かだと思ったら落ち込んでたのか。
日本にいて、どこで英語なんて使うんだ!
誰もが一度、思ったことがあるはず(笑)