147 感動のない再会
「純お兄ちゃん~」
「……まず、何故窓から入ってくるような事になったのかと言うところから聞こうか。後ろの諸々は後でいいから」
「やってみたかったの~。そしたらね~、妙羅……えぇと~、先輩~? がやってみるか~って言うから~」
…………純だ。
妙羅、ってのは多分、絶対、間違いなく後ろの偉そうな死神か……。
「うちの妹に悪い影響を与えないで欲しいのですが、妙羅置物生徒会長」
「誰が置物生徒会長だと?」
「え~? 知り合い~?」
最後にあったのは小学生のころじゃねぇか?
「わぅ! よく知ってるでした!」
「その通りだよー。あれ、君は誰ー?」
『みゅみゅっ!? みょーらは今は置物ではないでしゅよ! かいちょーでもないでしゅよ?』
「貴様らは少し黙らんか」
襟首つかんで投げ捨てるこた無いと思うけど……。
あぁ、ちびっこい耳で歩いてるやつは耳をつかまれてたけど。
何か黙るどころかどっか行ってるし。
「んで、光? 何してこいつと会った?」
「ん~っとね~、はーちゃんとみーちゃんと一緒に遊んでたら飛んで来たの~」
「悪い、聞いた俺が馬鹿だった」
「酷いな~。で~、純お兄ちゃん知り合いなの~?」
今までで一番いい思い出のない知り合いだな。
「小学……たぶん五年の時、一年間授業妨害してきた迷惑野郎だ。他人以上かも知れねぇけど知り合い以下だ」
「……とりあえず最高ランクで知り合いにしておくね~」
他人でいいんだけど。
「貴様、何故それを知っている? それを知ってるのは純とか言う口の悪い小学生だけのはずだが。……それともアイツ、喋ったか?」
「馬鹿かお前、あれから何年たったと思ってやがる」
三年と少しだぞ?
「純お兄ちゃんがお前って言った~!」
光は何か驚くところがずれてるだろうが。
「貴様、純か!?」
「気付けよ!」
馬鹿だ、絶対に馬鹿だ。
置物とは言え、よく生徒会長なんかになれた。
「…………大きくなったな」
「子供の成長を楽しむ爺婆かテメェは!?」
「すぐに殴る癖は改めろ」
あっさり受け止める癖に……。
「すぐに殴る相手はテメェだけだ」
「そうだっけ~」
光、テメェはどっちの味方をするつもりだ?
「んで、今は置物何をやってんだ?」
「誰が置物だ」
「置物であるからこそお前だろ?」
「そうか、その置物に貴様は何度組み手をして負けた?」
「素人が鍛えている奴相手にかなうものか」
オマケに霊体の奴は身が軽いし。
……つか、浮くし。
「……思い出せば思い出すほどお前の方が圧倒的に有利じゃねぇか」
「人間は不便な体してるな」
お前らが便利すぎるんだ。
『みょーら、みょーら! みゅーちゃんこんなにお菓子貰っちゃったでしゅ!』
「捨てて来い」
『みゃぁああああ! お菓子!』
……いきなり窓から投げ捨てるこたねぇだろ。
「妙羅先輩! お菓子が降ってきたでした!」
「違うよミリアちゃんー、妙羅先輩が投げ捨てたんだよー」
「ななっ!? 何するでした!」
急に騒がしくなったな……。
「そいつらは?」
「卒業して無いくせして勝手に仕事についてくる馬鹿姉弟と+α」
+αって……。
「馬鹿姉弟とは何でした!?」
「成績優秀の十歳にして十年生の天才ですよー」
自分で言うなよ。
『ぷらすあるふぁ? なんでしゅかそれ?』
「……耳が大きいという事だ」
『褒め言葉でしゅね!』
褒め言葉なのか!?
「よし、帰るぞ」
「ん、帰るのか。二度と来るなよ」
「やっぱり妙羅先輩って嫌われてるでした!」
「自業自得ってやつだねー、ミリアちゃん」
やっぱりってなんだ。分からないでもないが。
自業自得は思い切り納得してしまわないでもないが。
「こいつの二度と来るなはまた来いという意味だ」
「えーっ、ありえないでした!」
「あったらびっくりー」
……こっちを見てくるな、こら。
「そういう意味だ。な?」
結局こっちに振るのかよ……。
「はぁ……、あぁ、それでいい」
だって、何て言っても意味ねぇし、こいつ。




