146 扇風機
「あー」
ぶおおおおお
「うー」
ぶおおおおお
「わーれーわーれーはーうちゅーじんだー」
「……馬鹿が一人発生した……」
へー、誰のことー?
忍でーす。
扇風機で遊んでました。
馬鹿じゃありません。子供じゃありません。
「暇なんです」
「何故敬語?」
「暇なんです」
「……で?」
「暇なんです」
「俺にどうし「暇なんです」そうか」
「暇なんです」
「…………」
あ、純兄ひどい。スルーするつもりだ。
「暇だ暇だぁ。おにーちゃん何かない?」
「ガキか」
「おっさんに言わせれば中学生もガキ」
「で?」
「純兄もガキ」
「少なくともお前よりはマシだ」
あら、あっさり認められた。
「あー、わわわわー」
「……気ぃ散るから扇風機に向かって声を出すな」
「やりたいの?」
「何でそういう結論になんだよ……」
やりたくて気が散るという意味にもとらえられないこともない。
「純兄何やってんの?」
「テスト勉」
「……まっじめー」
「うん? テメェも昨日はやってたろうが。それもなんと二時間半、テメェが」
塾行ってる人から見たら少ないんだって。こんなに多いのに!
「ただし理科だけ」
「他の奴はやる気なし!」
「何でそれを扇風機に向かって言う? ……やる気がないという割には一昨日学校に行く途中に何やら社会の暗記に夢中になって電信柱に……」
口元だけで笑うなっ! これならなっくんみたいに大笑いの方がマシかもしれない。
……あーいや、どっちも嫌だ、やっぱり。
「社会はやらないとまずいもん」
「そうだな、授業全部聞き流してるとか言いながら全部聞いててしっかりノートとってるくせに社会だけ覚えられないんだよな」
笑いながら頭を撫でるなぁっ!
「すっげー馬鹿にされた気分だ、にーちゃん」
「岳のマネか?」
うん。なんとなく。
「ちなみに思い切り馬鹿にしている」
「してんのか! やっぱりしてるんだ!」
声を殺して笑うのやめーッ!
……よく笑うなぁ、今日の純兄。
「ぜったい今回は理科負けないから」
前回、小さな暗記漏れひとつで純兄に負けました。
「ほぉ?」
「いや、まぁ終わったテストのこと言ってもしょうがないけどさー」
理科のテスト、今日だったし。
「なら英語で勝負するか? 明日だし」
「えぇーっ」
自分が苦手じゃない教科持ってきたな。
得意じゃないらしいけど。本人曰く。
「よしっ、英語と音楽!」
得意教科、んでもって純兄の苦手教科を持ってまいりました。
「ぐ、音楽……まぁいい。じゃあそれで」
あら、結構あっさり。
あ、そっかー、実技教科のテストは暗記でどーにかなるって美術のヤッちゃん……もとい先生が言ってたもんね。
「純兄ー、運指だいじょーぶー? んでもって譜面は暗記できたー?」
「……それは扇風機に言ってるのか?」
「さーねー」
ぶおおおおお
すーずし♪