142 絶賛暇中の四人組
「暇だなー」
「暇だね」
「暇ねー」
「他に何か言う事はねぇのか。……暇だということは否定しないが」
否定しねーんならいーじゃん。
岳だー。
友達と遊んでて暇というのはどーゆーことだろーな。
「よし、山でも登るか!」
「岳ー、何が悲しくてこの暑いのにさらに暑くなんなきゃならねーの?」
山の中って涼しいぞ?
……いや、登ってたら暑くなるけどさー。
「涼しい所って言ったらあそこよね、水辺!」
「まず木陰まで移動することが先だと思うが?」
ちなみに、今いるのは遊具なんて全く無いくせしてこの辺じゃ一番でかい公園。
とーぜん、そんなところに居たら影に入ることなんてできるわけ無い。
『だよな(ね)ー』
移動開始。
……どこへ?
「岳、どこ行くんだ?」
「知らん」
「んな無責任な……」
無責任? だからなんだ!
「あ、ねぇっ! 砂原池行かない? ほとりなら涼しいよ! 木もいっぱい生えてるし……」
「おぉっ! 古閑ナイス! 一昨日にーちゃんがかっぱに絡まれたところだし、それに会えたら怖くてさらに涼しく……あれ、古閑ってビビり?」
修也の腕にがっちりしがみついてるけど……。あ、修也ー、顔赤いぞ?
「いちゃつくなら邪魔者は退散するべきだよな!」
翔、身を乗り出して言う言葉か?
「暑いから離れろ!」
「だだだだだだだって! かっぱだよ!?」
『かっぱならもういないある』
「いやぁああああああ出たぁああああああああッ!!」
あのー。
古閑の悲鳴の方が怖いと思ったオレはおかしいのか?
『五月蠅い、五月蠅い。シャース、埋めていい、埋めていい』
埋める!? 埋めるって言ったか!?
「はぅっ」
「奈那子!?」
あらら、気絶した……。
「はぅっ」
「って翔もか!?」
何つーか……情けない。
『シャーモ、人間はそうホイホイ埋めるもの違うね。たまににするべきね』
たまにならいいのか!?
『……む』
「高山、声だけのこいつ等はお前の知り合いか?」
「生憎こんな物騒な奴に知り合いは……あぁいや、物騒な知り合いは居るけどこいつらは違う」
斬はどー考えても物騒だよなぁ。
次会うときマシになってるといいなと思ったオレはよくばりなのか?
「…………物騒な知り合い、居るのか?」
「そこは突っ込んだら負けだ修ちゃん」
「誰が修ちゃんだ!」
何で怒鳴られにゃならんのだ。
「えぇと……とりあえずどこ向いて話せばいいのかわかんねーから出てきて?」
シャースとシャーモっつったっけ?
『さっきから後ろに居るね』
「うぉっ、背後霊かお前!」
『背後霊なんていないね!』
たとえだ、たとえ。
『シャース、シャース』
『何ね。今会話中ね』
『もう、時間。帰る、帰る』
……時間? こいつ等門限あんのか?
『あぁっ!? 本当ね! もうすぐみろすなの放送時間ね!』
『アニメの、どこがいい。分からない、分からない』
アニメェッ!?
『お前にあの良さ分かるか! とにかく帰るね!』
ばしゅっ
ってな感じの音立てて、砂ん中に潜ってったけど……。
「何だったんだ……」
「さぁ?」
それよりオレはこの妙にふかーい穴の方が気になる。
入りたかねーけど。
「うぅ……あれ、おれどーしたんだっけ?」
「はっ!? 修也、修也! 埋まってない!? 食べられてない!?」
食べるは何処から出てきたんだ。
「お前は大丈夫なのか?」
「はぅ……よかったぁ。うん、あたしは大丈夫」
「おーい誰かー、おれの心配をしてくれー」
それを言ってる時点で大丈夫だろ。
それにしてもー。
「暇だなー」
「暇だね」
「暇ねー」
「他に何か言う事はねぇのか。……暇だということは否定しないが」
否定しねーんならいーじゃん。
そろそろ涼しくなってきたし、帰るかなー。