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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
六月だって暴走中
141/410

141 かっぱでなくても良かったらしい

 けきょけきょけきょけきょけきょ……

 わー、スズメってよく息続くねー。

 え? あれはスズメじゃない?

 現実逃避に突っ込まないでください。

 忍でーす。

 約束を破るのもなんか罪悪感するので、結局オカルト部のかっぱ調査(と言えるようなことをこの人たちがするのかどうかはともかく)に、同行してしまった。

 ところで、あたし達が一昨日かっぱ見たのは橋の上だったんだけど……

 今いる場所が本来立ち入り禁止の池のほとりというのは、どう言う事でしょう?

 んでもって、何故その池のほとりの一部だけ(・ ・ ・ ・)が砂でおおわれているのでしょう?

『池のほとりが砂地になっていることから砂原池と名付けられた』(マコちゃん談)

 一部だけ、それも人一人が立てるくらいの広さしかないんだけど、砂地。

「何でここだけ砂なんでしょうね、えっちゃん先輩?」

「えぇっ!? 私だって知りませんよ! 聞くならまこ……」

 どよ~ん

 絶対、漫画ならこんな効果音ついてるよ。

 知らない情報、っていうか自分の情報が間違ってたことかな? がよっぽどショックだったんだね……。

「マコちゃん! 正しい情報がわかったんだからいいじゃん! ね?」

「そう、ですね……はい」

 おぉ、立ち直った。

 たまにはいい事するねー、部長。

「で、本当にこれ何ですかね、不自然極まりないんスけど」

「掘ってみよう!」

 ところで、あたしは居る意味あるんでしょうか。

「こんなこともあるかとシャベルを持ってきてある」

「さーすがはるやん!」

 何でこんなことがあると思ったのか、砂のことよりそっちの方が気になるんだけど。

「ほらほら、しののんも!」

「はーい」

 砂くらい手で掘ればいいのにって思ったあたしは前世モグラだったとかじゃないよね?

『殺すぞ、殺すぞ』

「へ? ハルやん、何か言った?」

「いや……でも、声は聞こえた」

「あ、あの……今の、砂の中から聞こえた気がするんですけど……」

『えぇっ!?』

 まさか。

 ……と、はっきり言えない自分が悲しい。

『黙れ、帰れ。それとも埋まるか、死ぬか』

「せせせせせせ先輩、どうしましょおおおおおお!」

『まず、お前、お前』

「へっ!? うぎゃ」

『タツノオトシゴーッ!』

 何か、あだ名のせいでいまいち緊張感が無い。

 タツノオトシゴの足が膝くらいまで砂に埋まったんだけど……。

「あの、砂の面積広くなってません?」

 んー、そういえば、さっきの倍くらいの大きさに……。

「ってどーなってんの!?」

「うあ」

 あ、腰まで沈んだ。

「あわわわわわ、タツノオトシゴーッ!」

「叫ぶなアホーッ!」

 あ、ついに部長をアホ呼ばわりした。

 すでに胸あたりまで沈んでるし……。

『帰るか、帰るか』

「帰るッ! 帰るから……離して……」

 離して? 足でもつかまれてるの?

『シャーモ、何してるか。とっとと離すね』

 ……お知り合いですかー?

「わぁっ、チャイナ服! さらに中国なまり!」 

「あれ? 見えるの?」

 どー見ても霊体なんだけど、この子。

 身長あたしと同じくらいだー。

『私らなめるな! ニンゲンに姿見せるくらい簡単ね!』

 怒られたの? 怒られた感しないけど怒られたの?

『ほらシャーモ! いつまで潜てるか。 お前もそいつ離してさっさと出てくるね』

『……む』

 わぁ。この一文字だけですごく不機嫌ってわかったよ。

「あぁ、やっと手ぇ離れたぁ! 怖かった……」

「だ、大丈夫ですかタツノオトシゴ……」

『これでいいか、いいか』

『ばっちぐーね』

 あ、出てきた。こっちもチャイナ服。

 ……あのぉ、ところで。

 とても手を離しただけでは出てこれないような深さまで沈んでますけど。

『で、お前らいたい何しに来たか?』

「あれ? 何しに来たんだっけ?」

「……かっぱを探しに来たはずです……」

 忘れてたの!? あたし、凄く損した気分……。

「でもまっ! この人たち、未確認……えぇと、まぁ見つけたんだからいいや!」

『かっぱ? 皿帽子のあれか?』

「それだな」

 皿帽子って言うとなんだか帽子の一種に聞こえてしまう不思議。

『昨日、昨日、どこか、消えた、消えた』

『えぇえええええ!?』

 あれ、純兄が原因?

「……どんな感じだった……?」

『先頭に、怖い怖い騒ぐ皿帽子がいたある』

 あぁ、絶対純兄が原因だ。

『それの回り、回り、医者が固めてた、固めてた』

 入院でもしたのかなぁ。精神科の。

「じゃあ会えないんだー。ざーんねん」

「ってか、オレはいつここから出れるんスかね?」

「あーっ! ごめんねタツノオトシゴ! 忘れてた!」

「……いや、そうだと思ってましたよ。えぇ。分かってましたとも」

 あれ、傷ついた?

『シャーモ、出してやるね』

『……む』

「ぎゃぁあああああっ!」

 おー、手をちょっと動かしただけなのに、砂がタツノオトシゴ放り投げた。

 ……吐き出したように見えたのはあたしだけではない筈。

『シャーモ、お前も少し丁寧を覚えるべきね』

『いらない、いらない』

 説教してる場合ではないかと。

 余裕で木の高さ超えてるよ?

「ちょっと!? あの高さから落っこちたらタツノオトシゴ、死んじゃいますよ!?」

『またく、人間は弱いある』

 やれやれって……いったいあんたはどれくらい丈夫なの。

 一瞬後。タツノオトシゴはきれーいに着地。

 女の子に抱えられて、だけど。

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