136 ぬいぐるみだって悩みます
こんにちは。昨日発掘されました、ニンジンとサツマイモの甘煮です。
ただいま、今まで見たことのない女の子に破れたところを繕ってもらっています。
あぁ……親切だなぁこの子。
「でもよくこんな特徴的なぬいぐるみの存在忘れてたよね~」
……独り言で妙にぐさりとくる言葉を吐きますが。
私、忘れられてたんですね……。
『おぉ、お前は!』
え、なんでしょうこの青い車。
『お前は……』
何やら私のことを知ってい……。
『誰だ?』
る訳がないですね、はい。
でも私はこの声を聞いたことがあります。
『ラジコンカーさんですか』
『おぉぅっ!? ま、まさかオレって有名!?』
えぇと、馬鹿なのでしょうか、アホなのでしょうか。
それとも、両方なのでしょうか。
「あれ~? なんでラジコンがこんなところに~?」
『何でですか?』
『オレの家にオレがいて何が悪い!?』
あら。
『その家は皆の物です』
『……なんか、お前って頭固そうだな』
『がちがちのプラスチック頭が何を言うんですか。私の頭は布と綿でできていますから当然やわらかいですよ。ふわふわです』
もまれてもまれて擦り切れるほどの気持ち良さだったんですから。
……いえ、私はひりひりして痛かったんですけどね。
『そーじゃなくてなー。やっぱお前頭固ぇ』
『どう思います、ウサギ人形さん』
『やっぱりぃ、あたしがいっちばん可愛いわよねぇ』
あぁ、聞いた私が馬鹿でした。
「あぁ~っ! みみちゃんだ~! こんなところに~!」
あ、あの、ちょっと!?
私の背中に針を突き刺していかないでください!!
縫う位ならちょっとちくっとする程度で済みますけどね!?
こんなに針山みたいにグサッといかれたらすぅっごく痛いんですよ!?
『あらぁ、光ちゃんじゃなぁい。って、ちょっ!? 耳! 耳つかまな……あふぅ、あれぇ? なんだったっけ』
ウサギ人形さんのもう一つの人格が出たぁ!
このうさぎちゃんはラビットちゃんと違ってとてもいい子なんですよねぇ。
じゃなくて! 針! 針! 抜いてください!
「あ~、うさちゃんも耳のところがちょっとほつれてるよ~」
……もう、いいです。
あきらめました。はい。
この針の痛みを我慢してこそ、真のぬいぐるみになれるのです!
『なんだよ、それ』
『何故私の心の声がっ!?』
『いや、心の声がオレらの声だろっ!』
はわわわわ~! 忘れてたのです!
ということは私の考えてたことすべてダダ漏れだったのですね!?
『そうだよ。ニンジンとサツマイモの甘煮ちゃんったらうっかりさんなんだから~』
はぅ……。
『ところでいつこの針は抜けるのでしょうかっ!?』
『…………』
何か答えてくださいよぉっ!