134 懸賞に応募しよう
「父さーん、何してんだ?」
はがきだらけだけど。
「懸賞に応募しようと思って」
「懸賞?何の?」
チラシもいっぱい。
岳でーい。
「今書いてるのはこれ」
ふむ? 何々……。
《男女虫キャンペーン!
パッケージについたシールをはがきに貼って送ると抽選で五十名様に男女虫パペットをプレゼント!》
……えぇと、どー反応すりゃいーんだ?
「……欲しいのか?」
「いや」
欲しくねぇなら応募するなよ!?
「ほら、こういう誰も応募しなさそうな奴は当たる確率が高いだろ?」
そういう考え方をする奴は他にもいるんじゃねーのかなぁ?
「んで、もしそれが当たったらどーすんだ?」
「喜ぶ」
「……で?」
「終わり」
「終わりかよ!?」
もったいねー!
「結局邪魔になるだけじゃねーかよ!? 大体なんだよ男女虫って!?」
「知らん」
「知っとけよ!」
「とあるお菓子のキャラクターだ」
「知ってんのかよ!?」
あー、なんかすっげー疲れてきた気がする。
「オレ、年かな」
「……小六が何言ってんの?」
「お前のせーだ!」
「人のせいにしてはいけません」
「やかーしぃ! 本当の事だろが!」
よし、落ち着けオレ。
とりあえず話を変えよう。
「んで、応募するやつ他にねーの?」
「無い」
「ねーのかよ!? はがきこんなにあるのに!?」
「と見せかけて」
「見せかけんでいい!」
「実はこっちに本命が」
だったら全部そっちに出せよ……。
「たたたたったたー。ニ○テ○ドー3○Sー」
「おおおおおおおおおお!」
まずは何で青い狸が不思議な道具を出すときの音楽を口で言ったのかから説明してほしい!
「3○Sって、これあんの!? 応募すんの!?」
「いや」
「しろよ! 何で出したんだよ!?」
「応募したいんだったら自分で書いて」
「あ、うん」
……あれ? 何かはめられた気が。
父さんもしかして自分で書くの面倒だっただけなんじゃ……。
「あれ~? 何やってるの~? 二人して~」
「あ、母さん。懸賞書いてんの」
「…………お父さん~? まさかまたいらない物貰おうとしていないでしょうね~?」
あ、父さん硬直。
おもいっきりいらん物貰おうとしてたもんな。
「あ~!やっぱりまたやろうとしてたのね~!」
「母さん、またって?」
「十年くらい前にね~、冗談でこぉ~んなぬいぐるみの懸賞に応募して~」
こぉ~んなって……見た感じ冷蔵庫位ありそうなんだけど。
「当たったんだ」
「ううん~、十枚外れたの~」
「ならいいじゃんかよ!?」
「出したはがきは十二枚よ~?」
んじゃ二枚は当たった……って!?
「そぉ~んなぬいぐるみが二体も当たったのか!?」
「そうなのよ~。ほら~、そのうち一体は保育園にあげたんだけどね~」
何だ、あげたのか。
「もう一体は?」
「……はぁ~」
え、なんで溜息吐くの?
「岳が物凄く気に入っちゃったからあげたり売ったりできなかったんじゃない~!」
「えええええええ!? オレのせい!?」
記憶にはない!
いや、十年も前なんだったらオレ一歳か二歳なんだけどさ。
「オマケに忍まで気に入っちゃってるし~、純はぬいぐるみは興味なさそうだったのに二人の味方するし~」
おぉ~っ、五歳のにーちゃんやっさしー!
あれ、光は? そっか、生まれてねーな。
「で~、結局今は押し入れでぐっすりなのよ~」
あるのか!?
よし、このはがき書いたら探してみよう。