128 六年、全員リレー!
「おー、すっごいいい勝負」
125対128かぁ。
「お姉ちゃん~、嬉しそうにしないでよ~」
「負けてるんだよ!? ウチ等!」
たった三点じゃん。
「……たかが三点、されど三点……」
「もぉー。後玉二個入れたら勝ってたのに!」
玉入れってそうそう入るものでも……無いこた無いなぁ。
「あれ~? そういえば純お兄ちゃんは~?」
「帰った」
『え~!?』
岳脅すだけ脅してさっさと帰ったんだけど。
「気付かなかったの? 次の六年の全員リレー終わったら昼休みでしょ?」
「だって~」
「純くんなんてどこフラフラしてるか分かんないし」
……まぁ、そうかも。
「フラフラするのは忍だ」
「純兄!? あれ!?」
帰るって言ってたのに!?
「……帰って、無いよ?」
「もう一度来ただけだ」
「純兄が!?」
「……どういう意味だ?」
わざっわざ純兄がもう一回来るなんて……。
「明日は……うん、雪とまではいかなくても雨だ」
「何か岳が来いとか言ってたからな」
なんかスルーされた。
「あたしそんなの言われてないんだけど?」
「テメェは言わなくても来てるだろうが」
来ないかもしれないじゃん。
「忍は暇人だもんな!」
なっくん、嬉しそうに言わない!
「あ、お兄ちゃん!」
「ほら、もう始まってる。応援しなくていいのか?」
あれ? あ、ほんとだ。始まってる。
たーけーるーはー……。
「あ~、岳お兄ちゃんアンカーだよ~」
「……チッ」
え、純兄今の舌打ち何!?
「岳……今俺がいた方が怖くて速くなるって言いやがった」
読唇術……便利だよねぇ、こんな時。
「事実じゃない?」
「ん、岳が負けた時はついでにテメェも……あぁ、言わないでおいてやる」
あたしが岳に言ったのと同じ事言ったぁ!
「なっくーん、純兄が怖い」
「あはは、頑張れ。俺は白を応援するかな」
人の不幸を笑うなぁっ!
「おにーちゃーん?」
「……敵だー」
「やっつけろ~!」
「はい?」
人を呪わば穴二つー。
……人を笑わば穴二つ?
体に穴が開かないように気を付けてね。
「お前らとにかく応援席座ってろ!」
「お兄ちゃんたちが居るから「よし、んじゃ別のとこ行くか」えーっ」
えーっ。
ここが一番見やすいんだけど。
「ところで忍?」
「何?」
「ずーっと鉄棒の上に座ってて足痛くならねーの?」
ここが一番見やすいんだけど。
「んー。若干……あーいや、大分痛い」
棒に当たる位置変えてるんだけどなぁ。
「本部席の方意外と見やすいぜ。ゴールもあっち側だしさ」
「行く」
くるんと回ってー。
元に戻った。
一回転。
「天国回り~」
「地獄回りは」
できません。
「行くならさっさと行かねぇと……あとちょっとしか残ってねぇし」
アンカーまであと二人じゃん。
「よし、走ろう」
「えー」
「何で言いだしっぺが文句言ってるの!?」
あ、あ、あ、後一人。
「とりあえず行こ!」
「う~、いいな~お姉ちゃん達~」
「……後三年」
「ウチ等があっち側に行くまで?」
「……うん」
「あーっ! こけた!」
「やべぇじゃん。抜かれた」
「ん、これはこれで『よくねぇよ!』面白『くない!』五月蠅い」
だって純兄がボケるから。
「これ団体競技だからドーンと入るだろ? 得点」
「一位四十点、二位零点、引き分けで両方に二十点。変わってなければ」
「詳しいな」
「二年連続得点係だからね!」
これはあたしだけだった。
「ん? 三年連続だろ。中一の時乱入してたから。知り合いがいるのを使って」
「頼まれたんだよ!」
言い方によって凄い違い。
「あ……白の奴速ぇ……。大丈夫か岳」
「さぁ?」
「……おい」
だーって。
「あ、やっとバトン渡った。岳は……白と同じ位じゃねぇか、足の速さ」
うー……。
四十三点差はキツそうだなぁ。
「……あれ? 何か岳、速くなってね?」
「ん? あ、ホント。さっきまでの何さ」
そんなら最初っから本気出せばいいのに!
「ねぇ純兄……? あれ、純兄は?」
「へ? いねぇの?」
んー、まぁいいや。
「あ、あ、あ、後ちょっとで追いつく!」
「でもゴールまでも後ちょっとだぜ?」
「岳ー! 負けたら怒るよ!?」
あ、さらに速くなっ……ちゃいないな、うん。
って言うか、これ位で速くなったら凄いなぁ……。
「よっし! 追いついた!」
パンッパンッパンッ
あ、終わった……。
どっちが勝ったの?
引き分け?
「ん、ぎりぎり勝ったな」
『純(兄)!?』
「どこ行ってたの!? っていうかそのカメラどっから……」
「親父が持ってたから借りてきた。ほら」
んー……?
あ、ちょっと岳の方が早くゴールしてる。
そういえば最後の最後で飛び込み前転してたような。
「これ借りに行ってたんだ。わざわざ」
「いや、岳を脅しに行った。これはついで」
岳が急に速くなったのは純兄が脅したから?
純兄……。
なんというか、凄すぎる。