127 体育大会、開会っ!
「っつー訳でテメェ等ぁ! ぜってー優勝すっぞ!」
『おーっ!』
いよっし! 気合十分! 練習十分!
小学最後の体育大会、ぜってー優勝してやるっ!
岳だっ!
「いやー、しっかしあのお菓子大好きせんせがあんなこと言うとは思わなかったな」
「あたしも……むしろ高山くんのセリフだと思ってた!」
「同じく」
いやー、オレってば意外とああ言う事は恥ずかしくてできないのよ?
「あー、開会式めんどくせぇ」
「それでいいのか応援団長!?」
「うっせ。どーせならチームリーダーにも言ってやれよ、それ」
「……それは俺がやる気ないように見えるという事か?」
うん?
「あるのか?」
「あるとは言いがたいな」
『結局ねぇのかよ!?』
「修也はそう言う事は表に出さないのよ!」
ほんとーにねーかも知れねーじゃんよ。
開会式終わったぁ!
と、本当に声に出しては言えないから心の中で叫ぶ。
ずぅっと立ちっぱってしんどいよなー。
しかもオレ応援団だから座れねーし。
最初はエール交換だからさ。
「応援団! 円陣組めーっ!」
……せんせのこのテンションってまさかずっとこのまま?
「よし、組んだな。んじゃ団長、何か言え!」
何か!? えー……よし。
「カステラパワーだ!」
『分かんねーよ!!』
とか言いながら足は踏み込むのな。
「よし、行って来い!」
『おぅっ!』
……ところで、応援団には女子もいるのに何でこんな返事ばっかりなんだ?
「赤組のーっ! けんとー願ってーエールよーい!」
『そーれっ!』
「フレーッ!」
『フレーッ! あーかーぐーみっ! そーれ!』
うーん、はっきり言って、これを待っている間が一番きつい……。
だってエールってほとんど同じだし!
応援合戦の方が見ててもやっても楽しい。
『次、赤組お願いします』
いよっし、来た!
昨日は『声がかれたら困る』とか言われて思いっきり喋れなかったからな!
ストレスはっさーん!
「あ……白組のーっ!けんとー願ってー! エールよーい!!」
あっぶね、赤組って言いそうになった。
『そぉーれっ!』
「フレーッ」
『フレーッ! あーかーぐーみっ!』
全員間違ってんじゃねーかよっ!?
『フレッフレッ、あろ組』
混ざったぁ!?
『フレッフレッ、白組っ!』
あぁ、元に戻った。
『お~~~……ファイトぉ!!』
ピッ
よし、とりあえずこれでもいーじゃん思考で行こう。
過去は振返らない主義だ!
『プログラム二番、五年生の100m走です』
「応援だーん!」
水くらい飲ませろっ!
「よぉ、岳」
「にーちゃん!?」
いっつも来ねーくせに!?
明日は雨かぁ。
ぺしっ
「いてーな」
「ん、余計なことを考えるお前が悪い。声に出てた」
ウソぉ!?
「ま、頑張れよ。俺のカステラ食ったんだからな。負けたら殴る」
その笑みを消せぇっ! 怖ぇ!
何!? まだ根に持ってたのか!? いやまだ一晩しか経ってねーけど!
いや、昨日な、カステラがあんまり旨かったもんだからにーちゃん達の分までうっかり(ここ重要)食っちまって……。
はぁ。めったに見せない笑みをここで見せられると怖さ十……百……いや、千倍かも。
「たっける~」
「あ、ねーちゃ……ぅげ」
ねーちゃんのも食っちまったんだけど……。
「あたしの分のカステラ食べたんだから、負けたらチリンチリンアイスのドロップあげない! プラス……うん、言わないであげる」
「余計怖いわぁっ!」
「はい、分かったら光のためも含めて頑張る! 行って来い応援団長!」
どん
はたくなぁっ!
「いってー。あぁもう、100m走始まってんじゃん。行くぞ!」
『おぅ!』
だからなんで女子までそんな返事なんだよ!?
と、とにかく、何が何でも勝たないわけにはいかなくなったぁっ!