125 皆の修学旅行記:短い詰め合わセット!
ホテルの夕ご飯
「……うーん、誰かがこれ食いさえすればここは完食なんだが」
夏の目の前には一人分のサラダ。
夏が隣の清に視線を移すと、
「オレ無理。もうパンク寸前!」
で、さらに隣へ視線を移すと……。
「僕もー」「おれも……」「俺も」
そして、最後の一人に全員の視線が向けられた。
「俺だって無理だからな!?」
岬だ。
……うわぁ、俺覚えてもらえてるのかなぁ……。
あ、考えたら悲しくなってきた。
「ちぇっ、美咲ちゃんも無理か」
「美咲ちゃん!?」
字が違う! 性別も違う!
「うーん……、よしっ、中国では少し残すのが礼儀だから中国流で行こう」
「アホかっ!?」
「……頭固いな、美咲さん」
あああああああもう!
「村田さんだからな」
高山までぇっ!?
普段女子に『さん』とかつけないくせに!?
民泊にて
「高山君、高山君」
「あ? ……紫波か」
「眠れないよぉ……」
「知ったことか」
俺にどうしろと?
「酷いよぉ……。ちょっとくらい相手してよぉ」
「あぁ、あれか? お前はひ弱な小さい子だから暗い所で、他の人が見えないと怖くて怖くて眠れないってか? 忍の暇つぶしに毎晩毎晩十二時近くまで寝れない俺がせっかく今日は寝れると思っていたのにそれを妨害してまで怖いって言うのか? なら俺は寝る」
「……えぇと、なんか、ごめん」
「分かったらさっさと寝ろ」
「はぁい」
……ん、あの話は半分以上が嘘だけどな。
「高山君……」
「寝たんじゃなかったのかよ」
「ゆ、ゆ、ゆ、幽霊なんて、いないよね? ねっ、ねっ、ねっ?」
「…………はぁ」
どういう訳かこの辺りは幽霊がやたら多くて追い払うのに苦労したのに……。
「嫌な事および面倒な事を思い出させるな」
「えぇえええええ!? ど、ど、ど、どう言う事!?」
「あ……いや、なんでもない。とっとと忘れて寝ろ」
これで素直に引き下がってくれれば楽なんだけど。
「え? なんでなんで? あぅあぅあ……気になるよぉ。でも怖いし……うぅ……」
……結局怖いのが原因なのかよ。お前はいくつだ紫波。
「はいはい、いいからとっとと寝ろ。幽霊なんざいねぇから」
「そ、そうだよねっ! ふぅ……お休み~」
「ん」
……夏、清、水谷。
よく起きなかったな、紫波の声大きかったのに。
民泊にて 2
「眠くなるまで、しりとりしようよ!」
「しりとり? ん、いーよ。しーちゃんと玲奈もやるよね」
「いいぞ。暇だし」
「いいわよ」
別に、やりたいわけじゃないけどねっ。
「りからね~。リス!」
「えー……と、次はあたしでいいのかしら?」
す、でしょう?
「スイカ」
「次あたしねー。カメレオン」
『…………終わったぁぁああああああ!』
嘘でしょ!?
「ぁっ!? ごめんっ! ごめん! 今のなし! カメラ!」
カメレオンなんてややこしいものが何で最初に出てくるのよっ!?
「あたしか。ランタノイド」
『何て!?』
「ランタノイド! ほら、元素の周期表の下の方に書いてある……」
だからなんでそんなものがパっと出てくるのよ!?
「ど? ど……ドミニカ共和国~」
……妙なものしかだしてはいけないなんてルール、あったかしら。
「くるみ」
「ミノタウルス……あれ、これなんだっけ」
分からないなら言わないでしょう!? ふつう。
「スカンジウム」
「なんで元素ばっかり出てくるのよ!」
「む、む、……むちむち!」
効果音!?
「ち、チタン合金……」
あたし、もしかして、遷った!?
「終わったよ!」
しりとりって、こんな簡単におわるものだったかしら!?
しりとりを書いていたらなぜか出てきた言葉の半分以上が最後に「ん」がつく不思議……何故でしょう!?