123 紫波の修学旅行記:班別研修
「おぉ~」
「見事ね」
「うん。見事に……」
「迷ったな」
紫波だよ!
んっとね、今長崎の観光……もとい班別研修中なんだけど。
うん、もうこれ以上ないほど見事に迷っちゃった。
おっかしいなぁ、眼鏡橋行くはずだったのに。
それでちりんちりんアイス食べる筈だったのに。
「高山君、ここどこだろ?」
「長崎」
「そうじゃないでしょう!」
あ~、鈴木さんって意外と元気だなぁ。
てっきりもっと高飛車な人だと思ってたんだけど。
「シジミ「紫波だよ!」どっちでもいいで「よくないよ!」話が進まないでしょ!」
だってだって!
「純兄にはこういうの聞いちゃ駄目だよ。純兄、全く知らないところじゃ方向音「お前もな」だから」
「ふぅん。てっきり何でもできる天才君だと思ってたわ」
「……嫌味か?」
「それ以外にどう聞こえたっていうの?」
あー……うー……前言撤回。
鈴木さんは高飛車です。
「っという訳でー、まずはここがどこから探さないと」
「目印になるような場所なんてどこにもないじゃない」
「あーうー……とりあえーず! アッチが南で「馬鹿。そっちは東だ」純兄わかるの?」
高山さん……。適当なことは言わないでほしいなぁ。
「時計で調べられるだろ」
あ、時計の短針を太陽に向けて文字盤の十二時との真中が南ってやつかな?
今は十時半だから、あのどどーんって建ってるビルの方が南だ!
「あ~、見て見て、あそこになんか面白い子がいるよ」
「……迷ってる?」
迷子の面白い子?
「うぅ……えぇっと、アッチが南でコッチが北で……あっれー?」
「枝里さんテンパっちょる……」
「んとんと……太陽がこっちじゃからやっぱりコッチが南になって……ぶつぶつ」
うわー。凄いな、なんかあれだね。
モロ不思議ちゃんだね。
「あぁーもう! 純兄わからん!」
「うっさい」
あ、まだ続けてたんだ。
「もう! 貸しなさいよ。あたしが地図読んであげるから!」
「あれ? もしかしてこういうの得意?」
「ま、まぁね!」
『最初から言えよ!』
「うるさいわね! ちょっと黙りなさいよ!」
はぁい。
「あ、忍、桜、玲奈。ちりんちりんアイス発見」
嘘っ。
「どこどこ~?」
「ほんとだ! しーちゃんナイス!」
「ちょっと!? 眼鏡橋は「眼鏡橋に行く目的、それはちりんちりんアイスが食べたかったから」……よって目的はもう達成される、と言いたいの?」
そういうことだよ! だってだって、予定表自分たちで作るでしょ? 『眼鏡橋の欄はちりんちりんアイスを食べる』って書かれてるんだもん。
一応眼鏡橋を見る、とは書かれてるけどそれは十五秒って書かれてたりしてねー。
「玲奈分かってんじゃん!」
「さぁ行こう~」
おぉーい!
「分かったわよ……。べ、別に、アイスが食べたいわけじゃないんだからねっ! あなたたちが行きたいって言うから「誰も聞いてないよ~」あぅ」
……鈴木さんって、僕にはつかめないような気がしてきたよ。
「あ、あっちにお土産屋がある。カステラの試食あるかな?
どうせ買って帰るなら美味しいのがいいしな~」
「……紫波「シジミだよ! ってあれ? 合ってた?」シジミ「言い直さなくていいよ!」」
あぁもう! どーせ僕はシジミなんだ!
お味噌汁の具なんだ! 佃煮なんだ!
「ん、とりあえず一方的に思ったこと言っておく」
うぅ……?
何か温かい言葉でも言ってくれるの?
「班別研修何処行った?」
ぜんっぜん関係なかったぁっ!
高山くんにこう言う事期待しちゃいけないんだね……そうだった。