120 お土産欲しいな
「さて」
「さてさて~」
「明日にーちゃんとねーちゃんは行っちゃう訳だけども」
「逝っちゃうみたいな言い方だね~」
怖くすんな!
岳だっ!
「分かった、言い直す。修学旅行に行っちゃうわけだけども」
「お土産に何くれるか会議~」
と、ゆーわけだ。
前に聞いたけどさー。イマイチ真面目に聞いてくれないじゃん?
ガチャポンとか安モンとか安モンとかって。
「お姉ちゃんはいいんだけどね~」
「オレはどっちもよくねぇっ」
ねーちゃんは終始無言だったんだぜ!?
聞きに行った時!
考えてるみたいだったけど……。あれは暗算してる顔だった。
間違いなくお小遣いの事考えてやがった!
「さてさて~、何かってくれるのかな~?」
「長崎っつったらやっぱカステラだよなー」
「ビードロがいい~」
ビードロかー。
……えっと。
「ビードロって何だ?」
「んーっと~……きつねがつるに意地悪してスープを平たいお皿で出して~、その後でつるに仕返しされるお話あるでしょ~?」
「うん」
あのつるの仕返しってさ、手で持って飲めばいけるよな。
ってずーっと思ってんだけど。
「あれのつるが仕返しに使った皿みたいな形のガラスのおもちゃだよ~」
……あの絵本についてたやつみたいなのだと……。
「でっか」
「もっとちっちゃいの~。丸い所が手に収まるくらい~」
ふんふん。
……おもちゃ?
「何処がおもちゃ?」
「ミニチュアつる仕返し皿だとほそ~い管がついてるでしょ~?」
無理やりまとめた!?
コレだと何かつるがちっちぇー見たいなんだけど。
「あそこから息吹き込んだら音が鳴るんだって~」
「あ、見たわけじゃねーの?」
「お母さんに聞いたの~」
ふーん。
「ガラスだから乱暴に取り扱ったら割れちゃうけどね~」
「えー。やっぱそんなら食いもんの方がいいな、オレ」
「キレイだって言ってたもん~」
オレは綺麗より旨い派だ!
「綺麗でも割れたら終わりだろー」
「瓶詰めにするもん~!」
っておーい。
「何ムキになっちゃってんのお前」
「欲しいんだもん~」
いや、これで買ってくれるわけじゃあるまいし。
「欲しいんだもん~!」
「オレに言うなよ!」
「違うよ~」
何で急に小声になるんだよ。
「純お兄ちゃんと忍お姉ちゃんって地獄耳でしょ~」
そーだな。うん。
前に宿題の分かんねーとこ聞きに言った時、オレが言うより先に解き方教えてくれてびびった。
「だから普通の声で言えば絶対聞こえてるから~、買わないわけにはいかなくなるでしょ~?」
「……おまーな」
聞こえて無かったよ設定で買ってくんねーかも知れねーじゃん。
「だってさー、純兄」
『うぇっ!?』
「急にごにょごにょってなったから聞きに来てみたら……」
「あぅ~……」
あー、逆に怪しまれちまってたわけね。
「ビードロねー。高いのかな?」
『さあ』
「……いや、そう返されるのは分かってたけどさ」
ガラスで綺麗って何か高そうなイメージあるけどな。
「買ってくれる~? 買ってくれる~? 買って買って~」
「オモチャねだる子供?」
「オモチャねだる子供だもん~」
「……あ、そか」
おーい。
「もー、しょーがないから買っとくよ。あったらだからね!」
「やった~!」
えーっ!?
「んじゃオレカステラー!」
「それは元から買うつもり」
「俺等も食いてぇし」
なんだよ。それ。
「この食いしん坊!」
『お前(テメェ)が言うな』
にゃはは。