115 家出なといれの華子さん 後編
「何やってんだ?」
「あ、純兄」
忍でーす。
なにやら『といれの華子さん』を名乗る『トイレの花子さん』が迷い込んできて……。
さっきから我慢してるのになかなかトイレに入れずに居ます。
「なんだ。といれの華子か」
あれ?
『華子さん! 何回言ったら分かるの!? 高山純!』
「五月蝿い。帰れ。また姉妹喧嘩だろ」
『酷い!』
「え? え? 知り合い?」
って言うか姉妹喧嘩!?
華子さん姉妹居るの?
「小学校の三階の美術室の前にある使われてねぇトイレあるだろ」
「うん」
「あそこで四人姉妹が順番にトイレの花子さんをやってるって聞いたけど。まだやってたんだな」
『五月蝿い五月蝿いうるさーい!』
君が一番五月蝿いよ!
「純兄トイレの花子さん知ってたの?」
「調べに行こうと言ったのは誰だ? あ?」
んー。
「私ですごめんなさい」
あの時はもやんとしか見えなかったけど気になって。
「ん。分かればよし」
思い出す、だと思うよこの場合。
「で、どーすんのコレ」
『コレって言わないの!』
「アレ」
『アレじゃなぁい!』
「ソレ」
『ソレでもなくて!』
「ドレ」
『分からなくなってるじゃない!』
「ざ・こそあど言葉!」
それがしたかっただけなのね、岳。
「で、純兄コレ『コレじゃな』どうしたら帰る?」
「華子の弱点を忘れたか?」
「忘れるも何もあの時はあたし幽霊見えなかったし。聞こえなかったし」
「あぁ、そうか」
忘れてたんだ。人のこと言えなーい。
「華子は酒を少しやれば赤くなってふらふら『酔うのかよ!?』そういうことだ」
…………。
「で?」
「え?」
いや、酔わせてどうするのって聞いてるんだけど。
「酔えば自分のトイレに入って休みたくなるらしい」
「はい~、お酒持ってきたよ~」
光……。その行動の速さは何。
「華子さ……ん!?」
「うぁ」
キノコ生えてる!?
暗いオーラが漂ってる!?
妙に静かだと思ったら……。
『誰も構ってくれない……。ふふ、どうせ私なんて、私なんて空気なんだわ……アンモニアよ……単二よ。ふふふ……』
『怖っ!?』
ハンパなく怖い!
「ん、マイナス思考も相変わらず……あ、少しは発動までの時間が延びたか?」
「どうでもいいよ!」
「花子さん~、あ~」
うわ、こんなところで名前間違えたら……。
『そうよね。名前覚える価値さえないわよ。うふふふふ……』
「華子さん~、お酒~!」
『むぐぅっ。ひっく』
おぉ、酔った。
『ひっく。あは、あはは! じゃあね~、また遊ぼ! あはははは。追いで追いで~』
『怖ぇって!』
「いや、アレはトイレに遊びに来いという単なる誘いだ」
……ややこしいというか、結局怖いというか。
とりあえず。漏れないうちにトイレ入ろ。