114 家出なといれの華子さん 前編
「うわぁっ!?」
『うわぁっ!?』
……びっくりしたぁ。
『いきなり大声出さないで! びっくりするの!』
「あたしだってびっくりしたよ!」
忍です。
トイレのドアを開けたら何故かおかっぱに赤いスカート、白いブラウスという姿の女の子がおりました。
えーっと……。これってアレだよね。
「トイレの花子さん?」
『違うよ! といれの華子さん!』
えぇっ!?
え? 『花子』の『はな』って『華』の字なの!?
「あと『トイレ』が『といれ』なのにはどういう意味が?」
『ひらがなの方が可愛くない?』
……違いが分からん。
「『花』と『華』にはどういう意味が」
『『華』の方がお嬢様みたいでしょ?』
全部イメージの問題かい!
「それはともかく……。何でトイレの花子さん……もといといれの華子さんが家のトイレに出てきたわけ?」
『家出なの!』
「速やかにお帰り願います」
『酷い!』
だって……家のトイレ狭いんだよ?
邪魔だよ……。
『せめて家出した理由くらい聞いてくれてもいいでしょう!?
そしてそこから新たな友情……ううん、愛情が芽生えて最後には「ちょっと待てぇい!」え?』
何だ!? 何か聞き捨てなら無い言葉が聞こえたよ!?
「何で愛情が芽生えるの!? その愛情ってああいう意味の愛情だよね!? 君はアレですか!? ユリかなんかですか!?」
あまりにびっくりして敬語になっちゃったよ!
『え? えぇっ!? お、女の子!?』
「お前な……。男子にしちゃ髪長いとか思わないの?」
『それが流行りなのかとおもって』
何で!?
いや、最近の流行とかサッパリ分からないけどさ。
「そうでなくてもさ……」
『それに服が男の子っぽいし、胸ペッタンだし、色っぽくないし……』
「服とかどうでもいいし。後の二ついらないもん」
『ほらぁ! 全然女の子っぽくなぁい!』
そんなこと言ってもねぇ。
服なんて純兄のお下がりだし。
だいたい中三で色っぽい子なんているの?
……学校にはスカート短くしてる奴がわんさかいるけどさ。
「っていうか、それ以前に」
『?』
「小説か漫画の読みすぎ」
『うわぁぁああああん!』
何で泣くの!?
『あんな素敵な恋をしてみたかったのに! 私の小さな夢だったのに! 夢が壊されたぁああああ!?』
そんな事言われても……ねぇ?
「な、何かよく分からないけどごめん……」
『ぅぅ……』
「ところで、そこどいてくれないかな? さっきから我慢してるんだけど」
『家出した理由聞いてくれないの?』
「速やかに以下略」
『略するなぁああ!』
五月蝿い子だな……。
「ねーちゃん何やってんの?」
『あ、岳。明日学校行く時この子連れてって』
「おぉっ!? 何々? トイレの花子さん!? マジでいんの!?」
らしいよ。
『といれの華子さん!』
「……あれ? って言うか華子さん成仏しないの?」
『といれの華子さんはオバケだからいいの!』
幽霊とオバケは違うのか?
「ねーちゃん、オバケは妖怪の一種でいーんかな」
「いいんじゃない?」
『良くないもん!』
ああもう、面倒なものが迷い込んできたなぁ……。