113 格闘ごっこ!
「ひーまだー」
「暇だな」
純兄の口から暇って聞くのは久し振りな気がする。
「てぃ」
「暇なのは分かったから蹴るな」
だって暇なんだもん。
忍でーす。
「純兄、純兄、やろうよ」
「……まさかとは思うが格闘ごっこじゃねぇよな?」
「それだけどなにか」
「はぁ……めんどくせぇ。でもそれを止めさせるのもめんどくせぇしなぁ」
何か純兄のめんどくせぇモードが全開だぁ。
「岳ー、光ー」
『何(~)?』
「純兄があれしてくれるってー」
『おぉ~っ!』
あ、純兄の顔歪んだ。
「あぁもう、めんどくせぇ……って、まさか俺対テメェ等三人じゃねぇよな?」
「そのまさかですが何か」
「はぁ」
「よっし、にーちゃん行くぜ!」
いきなりだねぇ。
「とぉ」
パンチ。
受けられる。投げられる。
あっさり終了。
……とは行きません。
「まだまだーっ!」
「えい~」
二人が行ったところであたしも混ざろう。
「岳、足払いっ!」
「おりゃ」
で、簡単に倒れてくれないのが純兄なんだなぁ。
「わ~!」
代わりに光が投げられてるし。
「ひーちゃんひーちゃん、何やってんの? あたしも混ぜて!」
「おいおい嘘だろ……」
残念ながら現実です。
「よぉ純。手伝おっか?」
なっくん、笑ってます。
……大爆笑?
「いや、むしろ交代してくれ」
「それは嫌だ。せっかく面白いのに」
うん、楽しそうだねぇなっくん。
「じゃあ忍、岳、夏の方行け」
「おまっ、面倒な方押付けやがったな!?」
「当然だ」
残念ながらあたしは動く気はありません。
「いっくぜーなっくん!」
「うあ」
「純兄いっくよー」
「はぁ……」
溜息ばっかりついてると……ええと、なんだったかな。
不幸が逃げる? それだったら皆溜息付きまくるわ。
あ、なっくんが逃げたの見えた。
あ、足つかまれた。
投げられた。
「あぁもう! 俺ってば今日はお前等を笑いながらゆっくりしようと思ってたんだぜ?」
「ん。それはしっかりぶち壊してやるから心配するな」
「分かった。今日の予定は明日にずらしておいてやるよ」
全然解決になってないような気がするんだけど。
「あっ! 何か凄く効率的になってる!」
「効率的~? あ~、背中合わせだから~?」
「そうそう! あれって後ろからの攻撃できないもん!」
何か某体は子ども、頭脳は大人の名探偵の映画にあったなぁこんなシーン。
やってるのも、それの相手も真逆と言っていいほど違うけどさ。
「とぅっ!」
「ん」
「あぎゃっ!?」
大丈夫かー。頭から落ちたけど……。
「岳お兄ちゃん~、畳でよかったね~」
「フローリングだったら絶対痛かったよ!」
「あ、あぁ……良かったのか……な? これ」
どうだろう。良かったんじゃない?
「よ~し! 一斉攻撃行くよ。その名も数より量作戦!」
「凄く頭悪そうな作戦だね! 忍ちゃん!」
ならどうしろと。
「ほい、ほい」
「結局全滅だな」
『あぅ~』
光とあたしが純兄、はーちゃんと岳がなっくんに押さえつけられてます。
痛い、重い、苦しいの三拍子がそろって最悪だね。
「つぶれるよお兄ちゃん! ウチがつぶれちゃったら、お兄ちゃん殺人罪だからね!」
「そこまで酷くつぶれるのか!?」
あれ、つぶれる事は前提なの?
「…………にゅ~」
「あっ純兄! 光本当につぶれかけてるから!」
「ん?」
「痛い痛い痛い痛い!」
光にかける体重を減らす分がこっちに来てるの!? ねぇそうなの!?
「ぱふ~っ! 抜け出し成功~!」
『作戦か!』
「ふふ~♪ はーちゃん~、すぐ行くよ~」
あたしは? ねぇ。あたし手伝ってあげたのに。
いや、気付いてなかったけどさ。