111 おやつは別腹、これは常識
「ただいま」
『おかえりー』
忍でーす。
さっきまでおばーちゃんに英語教えてもらってて、終わったからおやつ食べてるよ。
「おっ、いいところに帰ってきたみたい」
これ、あたしと純兄のおやつなんだけど。
「ん、爺さん太るぞ」
「もう太ってるよ、純兄」
「……死ぬぞ」
「何でいきなりそうなる!?」
何か色々すっ飛ばしてるような。
「生活習慣病で。婆さんに隠れて酒も飲んでんだろ?」
「何でそれを「かかった。婆さん、爺さん酒飲んでるらしいぜ」あぁっ!」
おじーちゃんが青くなった。
白くなった。緑になった。……えぇっ!?
「お祖父ちゃん? あとでちょーっと、お話があるのだけど・・・」
「ひぃっ」
おばーちゃん怖い。
「まぁ、野菜クッキーくらいなら食っても大丈夫だろ?」
何かしっかり原材料確認してるけど。
「おぉ純!」
「あぁ、やっぱダメ」
「はぁ……」
凄い。何か表情の変わり方が凄い。
さっきは後ろにぱぁって花が見えてたのに……今は何か青黒いオーラが見えるよ。
ついでに青い火の玉とかも。
「と言うのは嘘で、まぁ、こんくらい大丈夫だろ」
ぱぁっ
うわ~、分かりやすっ。
「あ、そういえばテスト、あったんだっけ?」
「ちょっと前に」
「どうだった?」
全体的にあたしの点数が上がって純兄の点数が落ちた。
「俺は合計473点。忍は……」
「覚えてないよ。計算して」
「……えっと、とりあえず460代だったと思う」
計算してたんだ?
「理科はね、クラストップだったよ」
「へぇ! 純超えたの?」
「うん! ……一点だけだけど」
あ、何か純兄が不満げな顔になってる。
お兄ちゃんのプライド? って奴なのかな。
「……あ、何かクッキー減りすぎでしょう? これ。お祖父ちゃ~ん?」
「ち、違う違う。忍!」
む、孫に罪をなすりつけようととでも?
「あたしそんなに食べてないもん。
……お腹いっぱいだからもういいや」
「つまりそれだけ食ったって事だな」
あぅ。
「五枚しか食べてないもん!」
「五枚も食ったのか」
『しか』と『も』で、印象って凄く変わるよねー。
「育ち盛りだからいっぱい食べても大丈夫!」
「何か話がそれてるような気がしないこともないんだけど」
気のせいだよ!
「あ、そうそうチョコレートあるけど食べる?」
「うん」
「まだ入るのか?」
「純兄、おやつは別腹なんだよ? 知らない?」
「人間の胃は一つしかない事しか知らないな」
あぁ言えばこう言う。
別腹は別腹なんだもん! ねぇ?