107 ラジコンカーの悩み
「うぉーっ、何かすっげー久し振りに見たコレ!」
「何何~?」
うわ、オレってばすんごい見られてるー。
「わ~! 本当に久し振りだね~」
あぁ……押入れでの生活は苦しかったぜ……。
オレが誰か?
ふっふっふ……あぁ、ちょっと待った、閉じるボタン押さないで。
ラジコンカーだ!
「電池入ってるかな」
「やるの~? やるの~?」
「ったりめーだ!」
「何が?」
おぉっ! かつての持ち主!
「うわっ、なっつかしー」
「電池オッケー、よし、ちょっとどいて」
よしっ! 久し振りに走るぜぃ!
…………。
「あれ? 電池切れてんのか?」
「違うよ~、これちゃんとはまってない~」
「っていうかフタは? 電池のとこの」
大分前から行方不明……あぁ、オレの骨!
「内臓丸出しじゃん、これじゃ」
……電池を内臓にたとえるなーっ!
「ま、いーや。行っけーい!」
びゅんっ
ひゃっほーい! 気分爽快! 走るのはやっぱ気持ちいーっ!
ごん
……いったぁっ!?
「いきなりぶつかってどーすんの。ちょっと貸して。……あれ、また動かなくなってる」
内臓がズレた……。
「よっし、今度こそー」
びゅんっ
ひょーっ! スレスレで椅子の足とか通るからスリル満点っ!
相変わらず上手いな!
がたっ……
段差に引っかかって内臓ズレたぁっ!
だぁもう! フタ見つけてくれよ!
「何やってんだ?」
『ラジコン(~)』
あぁっ!? お前は……!
かつてオレをバラバラに分解した恐怖の……えぇと、いい言葉思いつかん。
「あぁ、コレか」
びくびくびくびく……
「次私にもやらせて~」
「ほいな」
……ほっ、大丈夫そう……いやまてオレ!
前は大丈夫だと思った瞬間やられたんじゃないかっ! 気を抜くな……。
「……あれ~? さっき電池ちゃんとしたのに動かない~」
「ん? ちょっとコントローラー貸せ」
びくびくびくびく……
「……動かねぇな。こっちに問題あんのか?」
ぎゃーっ! こっち来るなこっち来るなこっち来るな!
「……忍、悪ぃけどドライバー取ってきてくれ」
「はいよー」
ぎゃぁっ! ぎゃぁぁあっ!
ぶーんーかーいーさーれーるー!
戻れるのか? 戻れるのかオレっ!?
カチッカチッ
何かボタン押されてるーっ!
「……動かねぇな」
……はっ!
警戒するのに夢中で動くのを忘れてたぁっ!
じゃあ何か? オレは自分のせいで分解されようとしてんのか!?
カチッ
ギュルルルルルル……
「あ、動いた」
「ほんと~? 貸して貸して~」
ふぅ、分解は免れたな……。
「よ~し~、ゴ~」
ぎゅーごん
いってぇっ!
何でいきなり追突事故起こさにゃならんのだぁっ!