104 ここで寝るな
「……眠い」
「またか」
今日だけで三十一回目だ。
「ねーむーいー」
「知るか」
純だ。
「そんなに眠くてテストは出来たのか?」
「うん、出来たよ。数学も公民も、解き終わった瞬間寝た」
あぁ、そういえば目の前で突然倒れたな。
……数学は残り一分だったような気がするけど。
「純兄ー、11111の素因数分解の答えって何?」
「覚えてねぇな」
「あたし、アレ解くのめんどくさくなって途中で止めたんだけど」
……このめんどくさがり屋……って、人のこと言えねぇか。
「うーん、まぁとりあえず適当に入れたからいいや。お休みー」
「ここで寝るな」
「…………すー」
……俺が寝るまでに起きる事を願おう。
じゃねぇとベット盗られる。
十一時。または二十三時
「おーい、起きろ」
「…………すー」
……くそ、本当に盗られるとは思わなかった。
オマケになかなか起きねぇし……。
どんだけ眠かったんだよ。
「涎垂れてるぞ?」
「知った事かー」
いやそうじゃなくて……って。
「テメェ起きてんだろ」
「…………むにゃ? 朝ー?」
「夜だ馬鹿」
「お休みー。…………すー」
おいこら。
こんなにコイツ寝付くの早かったか?
寝たふりか?
「おい」
揺する。
叩く(軽く)。
叩く(若干強め)。
あぁもう、こういう時ばっかり演技上手いんだから分かりにくい。
特に寝たふりは幼稚園の頃くらいから練習してたしな……。
理由? ソファーとかで眠くなって、そのまま寝たらベットまで運んでもらえたからだ。
って、前に自分から言ってた。
「おい、次は殴るぞ?」
「…………すー」
何かイライラしてくるな、これ。
女殴るのは好きじゃねぇけど、妹だしいっか。
ぼすっ
「こふっ」
……起きたか。
「…………すー」
あぁもう!
コレでも起きねぇってことはあれか?
俺が忍ん部屋まで運ばねぇといけねぇのか?
考えただけでもめんどくせぇ……。
くそ、最終手段。
「んっ」
「きゃわっ!?」
どた
必殺、引き摺り下ろす。
……最初からこうすればよかった。
「痛いよ!」
「五月蝿い。そこで岳が寝てんだから静かにしろ」
「んー。じゃあお休み」
「ここで寝るな!」
「えー」
えーじゃなくてだな……。
「んしょ」
「何で担ぐの。お腹痛い」
「知るか。運んでやってるんだろうが」
……何となく敗北感がするのは気のせいか?