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幸福への招待

挿絵(By みてみん)


 結婚準備期間というものは色々悩む事は多い。

 どういう結婚式にするか? 新生活をどうしていくのか? 未来についての悩みになるのだが、一つだけ過去を振り返らざる得ない悩みが発生する。それは招待客の選別。

 自分が今まで出会ってきた人間の顔を一人一人振り返る。どの人に結婚を報告し、そして実際に誰に来て貰うべきかコレがなかなか悩ましい。

「どうしたの、難しい顔して、もしかしてマリッジ・ブルー?」

 営業車の助手席で、まじめな顔をして運転している黒くんについからかいの言葉をかけてしまう。

 コレは結婚前に彼が私をそうからかってきたので、そのお返しである。

信号で止まった事もあり、黒くんはニヤリと笑いコチラを見る。

「ん? いや、ブルーではないかな。ピンクというかイエローとか?」

 私が答えた言葉を、今度は黒くんが返してくる。二人で思わず笑い合う。

「そういえばさ、月ちゃんが前、招待客について悩んでいたの意味が何か分かったよ」

 なるほど、こないだ式場決めたようなので、ソレを今悩んでいる所なのねと理解する。

「でしょ~! どこまで来てもらうか線引きが難しいのよね。でも、黒くん達は社内結婚だからその点、悩みは少ないよね」

 そう、黒くんと実和ちゃんは同じ課の人同士での結婚なので、ほぼ同じ同僚と上司を持つ。メインともいうべきメンバーが共通ですむ。

 私の場合は共通の知り合いは普通あまり呼ぶ事はいはずの小学校時代の先生と友人。他は皆別なのでかなり悩んだ。

「まあね~、今まで招待してもらった人を、お返しで呼ぶべきなのかとか悩むよね」

 確かにそれはあるかもしれない。それで人間関係が壊れるとはいわないが、選ぶ方は悩むものである。

「まあ、会社ではまず課の人。上司と直接仕事に関係している人。そして同期という感じで絞るしかないのかな?」

 私の場合は、お得なプランが『百五十人以内の披露宴でこの価格!』という感じだったのだ。なんとしても百五十人に絞らなきゃならないという状況でその選択が大変だった。

 結局姉の子供、従兄弟の子供は、子供メニューで別だからという事で 大人の頭数で百五十人ピッタリという調整をした。

「でもさ、同期もさ、七年目になると同期の仲間意識というのも流石に薄れてくるよね。だからその辺りもどうしようかと」

 流石に同期に二人も元彼女がいると、黒くんは招待もしにくいというのもあるかもしれない。

「まあさ、月ちゃん、松ちゃんは、今でも仲良くしているからいいけど。他のメンバーって招待状もらっても困るよね」

 私はそういう人間心理って不思議で面白いなと黒くんの横顔をしみじみ見てしまう。

 私の視線に気が付き、黒くんはチラリと見て苦笑する。

「あのさ、前々から、月ちゃんが誤解しているから訂正しようかと思っていたんだけど」

「誤解って?」

「俺と松ちゃんって、付き合ったことはないから。

 妙にその事で月ちゃんに気を遣われているのがくすぐったいから言うけど」

 え、私はその意外過ぎる言葉にビックリする。それだけ二人は良いコンビで仲良かったから。

 考えてみたら入社当時から別れたと社内で噂された後も、ずっと同じように良いコンビな二人である。

「そうだったのだ~チョットビックリ!」

「社内でそういう噂で、分からないうちにそういう認識になっていたんだよね。

 第一彼女、学生時代から今の旦那様一筋だったから。

 男としてそういう女性って、逆に友達として付き合いやすいというのもあって」

 なんか分かる気がした。黒くんと私もそんな関係だから。

 私が彼のタイプの女性ではなかったらしく、恋愛抜きでつきあえる事で黒くんとの友情関係は楽しい。

「なるほどね~ならもっと早く教えてくれても、ズッと妙な気を遣いしていて、私、馬鹿みたいだよね」

 でも、ずっと誤解して、オカシナ目で見ていたことが恥ずかしい。

「いやいや、それが月ちゃんのやさしさだしね」

 単なる大ボケを、そう言ってくれる黒くんの方が優しい。

 そんな会話をしているうちに、会社に戻ってきた。私は黒くんにお礼を言いながら車から降りようとして、改めて運転席の黒くんの方を見る。

「話が戻るけどさ、結婚式はね、やっぱり素直に来て貰いたい人を招待するべきだと思うよ。義理とかじゃなくて。

 その方が互いに楽しいイベントになるから」

 考えてみると、義理で招待されてもそれはそれで面倒だけ。

 義理で呼ぶほど結婚式の席に余裕があるわけでもない。芸能人な訳でもないからソレで十分だと思う。

「確かにね。シンプルに考えてみるよ」

 黒くんは、フワリといい顔で笑った。互いの生活が充実しているという事もあるのだろうか?

 なんか最近黒くんとも、前に増して良い人間関係を築けているような気がする。女の友情もいいけど、男女の友情というのも良いなと思う。

幸福への招待(PARIS PALACE HOTEL)

1956年 フランス

監督・脚本:アンリ・ベルヌイユ

キャスト:フランソワーズ・アルヌール

シャルル・ボワイエ

ロベルト・リッソ


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