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結婚哲学

挿絵(By みてみん)


 結婚準備で大変なのは、それぞれの両親への挨拶といった段階の話。

 この後は結婚式準備と新生活準備と新婚旅行準備、テンションも上がっている事もある。

 大変ではあるものの楽しいもの。なんていっても結婚をする二人で、夢を見ながら結婚に向かってラブラブと突っ走れる。

 黒くんと美和ちゃんは結婚情報誌を広げ仲良くランチタイムを楽しんでいた。

「此処、いいね! 料理が超豪華で! 三つ星シェフによる最高の料理に舌鼓! だって!」

「そこ、メチャクチャ高いじゃん! 却下」

 その雑誌をのぞき込みながら、同期の松梨改め松木友子となった友ちゃんも会話に加わっていた。

 苗字が一字だけしか変わらなかったことで、会社の人に『何? その地味な変化』とからかわれたものである。

「え~、招待される方の立場からいうと、二人がどんな格好するかなんかよりも、料理は重要よ!」

 何故か、実際声をあげて会話しているのは黒くんと友ちゃん。この二人は実は昔付き合っていた。普通だったらどうかと思う状況。

 友ちゃんはサッパリとした性格で過去を振り返るタイプでもない。だからこそ別れた後も二人は良い友情関係を続けているようだ。

 それに友ちゃんは現在新婚ホヤホヤ。

 会社でも惚気ている事も多いだけに実和ちゃんからしてみても、心配することもないのだろう。

 ニコニコと二人の言葉に頷いている様子なので、私も気にせずそのやり取りに加わっている。

 夏美ちゃんだけは、その様子に口出しすることもない。静かな表情で見守っているというか、興味がなさそうに見える。

『料理はケチるな! ショボいとずっと恨みをかうぞ! 前のあっちゃんの時は、料理が少ない、少ない、アレは参ったよ!』

 私は、ギョロっとした目を見開いてそんな事を言ってきたお舅さんの顔を思い出す。大陽父は、その結婚式の料理がかなり不満だったようだ。

「たしかに、料理は重要だよね。でもブライダルフェアーでも試せるから、確認するのもいいかも!」

 私の言葉に、実和ちゃんはビックリしたようにコチラを見る。

「え! 試食とか出来るんですか?」

 私は、よくぞ聞いてくれたと、ニッコリと笑う。

 やっと経験者らしいまともなアドバイスが出来る段階にきた事が嬉しい。

「ブライダルフェアーには、模擬結婚式とかに参加したら安く、もしくは無料でディナーを楽しめるから! そうそう、二人に是非お勧めの結婚式場があるの! チネチッタ!(※川崎にある映画館を中心とした商業施設) イタリアの映画都市を模した都市で結婚式するなんて素敵でしょ?」

「え? 川崎のチネチッタって映画館だろ? なんでそこで結婚式?」

 絶対、映画好きな二人なら食い付いてくると思ったのに。実和ちゃんはポカンとして、黒くんは、怪訝そうな顔でコチラを見る。

「映画館の上に、なんとチャペルがあるの。しかもそのすぐ前に披露宴挙げられる素敵なレストランもあるの!」

 実和ちゃんは、『へえ』と少し心を動かされたようだ。

「しかもね、ここでの結婚式での凄い所はそこじゃないの。ココで結婚式をあげるとね、一年間映画フリーパス券がついてくるの! コレはお得だよ」

 私は、結婚式を挙げたあとにこの事実に気が付いて悔しい思いをしたものである。コレがあれば、我が家の家計がどれほど助かったのか……。

 暫くウーンと何か悩む様子の黒くん。

「そのフリーパス券って使えるのってチッタのみ?」

 私は大きく頷く。しかしそんな私を見て黒くんはガッカリした顔をする。

「川崎までいかないといけないのは、ちとキツイかな~。 俺ら、大体渋谷とか池袋で観ているから」

 我が家からは、川崎は一本で行けるからいいけど、そうでない人にとって、川崎は利用しにくい都市なようだ。非情に残念な話である。

「まあ、雑誌だけ見ていても何も進まないから、まずはブライダルフェアーに行って! その式場の空気を肌で感じて決めるべきだと思うよ」

 私の言葉に、友ちゃんも、『そうそう』と頷く。

「それにね、ブライダルフェアーって、結構リーズナブルに楽しく遊べるデートイベントだしね」

 友ちゃんは、私や夏美ちゃんの方に同意を求めるようにニカッと笑う。私も同じような笑いを友ちゃんに返して頷く。

 ブライダルフェアーは面白い場所なのだ。模擬結婚式という形でディナーが試せたり、メイク講習、ブーケ作り体験とかの講習をしていたりイベントも多い。

 無料もしくはリーズナブルに様々なイベントを用意しているので、結構楽しかったりする。

「だよね~! 私なんか、二人で千円という感じでディナーコースを楽しんだよ。お舅さんとお姑さんの四人で式のフルコース頂いたこともあるし」

 友ちゃんも、人の結婚準備を見守りながら、自分の準備期間の楽しかった事が蘇ってきたようだ。ニコニコと私の言葉に頷いている。

「そうそう、私も人気パテシェによるケーキを食べながら結婚相談とか、衣装の試着とかも楽しかった!」

 ほう、そんな素敵なものもあるのか。今度夫婦でコッソリ冷やかしてみようかしらと、一瞬良からぬ事を考える私。

「そうよね、衣装を着てメイクして撮影というのもあって、結婚気分を良い感じで盛り上げてくれるわよね。

フェアーの冷やかしは、お金とか考えずに単純に楽しめるし」

 夏美ちゃんも、フフフとのってきた。

「そうだよね、実際式の事詰めていくと、色々細々、コレにいくらとかなってきてシビアになるからね」

 三人が顔を見合わせ、楽しそうにブライダルフェアの話をしているのをみて、二人も興味が沸いたようだ。

 二人で『じゃあ、今週末に早速行ってみる?』とか言って頷いている。

 その後既婚三人による、見積もりに関する講義が始まる。

 フェアーを冷やかすにしても、必ず『とりあえず見積もりと仮押さえ』といった状況になる。

 その事自身は、色んな意味で検討の材料になるので良い事。しかしその見積もりには結構落とし穴がある。

 あえて載せて無いものがある。安く見せて後で色々発生する危険性のある項目について説明をしておく。

 この事を知っておくだけで、その場でその金額について質問したりと出来る。その事を先に知って置いて損はないからだ。

 私だけでなく、冷静な友ちゃんと夏美ちゃんの的確なアドバイスまで加わったことで、コレで漏れはないだろう。二人のフェアーへの参加の心の準備は完全に整った。

 なんか、当事者だけでなく、同期である私達三人もワクワクしてくる。やはり結婚というイベントは、周りにいる人も幸せにするパワーのあるモノなのかもしれない。

 ともあれ、さらに強力な助っ人も加わり、二人の結婚準備はより順調なものになったのは間違いない。三人は笑顔でフェアーに二人を送り出した。

結婚哲学 (THE MARRIAGE CIRCLE)

1924年アメリカ映画

監督:エルンスト・ルビッチ

原作:ロタール・シュミット

キャスト:アドルフ・マンジュー

マリー・プレボー

フローレンス・ヴィダー

モンテ・ブルー

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