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ゼクシィには載ってなかった事  作者: 白い黒猫
避けて通れないご両親へのご挨拶
12/40

家族会議

挿絵(By みてみん)


「では、ご注文繰り返させて頂きます。

 三種のステーキセット2つに、稲庭うどんキノコ御飯セット二つ。天ぷらそばセット一つにドリンクバー6つですね」

 ファミリーレストランに、バイトのウェイトレスさんの可愛い声が響く。

 その言葉に満足そうに頷く、大陽くんのお父さんとお母さん。隣を見ると私の母と父が『どうしたものか』という顔をしている。

 このメンバーで、ファミレスで何をしているかとういうと、なんと両家顔合わせ。

 別に私は体裁とか仕来りとかに拘るほうでもない。

 しかし両家の両親の顔合わせって、普通は落ち着いたレストランか料亭。もしくはホテルかどちらかのお家で行うものだと思っていた。

 大陽家が指定した待ち合わせ場所にいき、じゃあ行きますかと連れてこられたのがこの、家族連れで結構なテンションで盛り上がったファミリーレストランだったのだ。


 私がドリンクバーに行き、みんなの飲み物を用意している間に、それぞれの自己紹介は終わっていたようだった。

 父親同士は、知り合いであるので、会話はそれなりにしているようだ。

 久しぶりにあった知り合いのわりにその再会を喜びあっているように見えないのは気のせいではないと思う。

「ところで、コレからどうするんだ? 結納とか色々あるだろ」

 やはり、こういう事は元上司というより、男性側の親が仕切るものなのだろう。大陽父が話を切り出してくる。

「まあ、無くてもいいだろ、面倒だし」

 それに、なんか偉そうに応える父。

 姉の時で、父はそういったイベントに疲れはれていたらしい。

 しかし、こういったイベントを面倒くさいで、すませていいのだろうか?

 そういった事を大事にしている家だってある。大陽家はどうなんだろうか? 恐る恐る大陽父の顔を見ると、不快そうにもしてないようだ。大陽母も変わらずニコニコしている。

「それもそうか、なら無しでいいか」

(結納はなしでいいのね……)

 そう言って、大陽父は珈琲をすする。

「あと、月見里さんの家も、ウチも親戚関西だから結婚式は新横浜にしようと考えてる」

「それはいいな」

 二人の父親は、同じように頷く。仲良くないけれど、こういう気はあうようだ。

「あと、月見里さんの家、クリスチャンなんでチャペルでええよな」

 我が家はというより、母が敬虔なクリスチャン。姉の時も、それで揉めて半ば強引に教会式となったのだ。今の大陽くんの言葉に、母が嬉しそうにウンウン頷いている。

 母にとって、バージンロードを娘が颯爽と歩き、神父様の前で結婚の誓いをする。その光景を見て、ああ娘は結婚するのねと、実感出来喜べるという事らしい。

 その事を前に話していた事を覚えてくれていたようで、大陽くんが切り出したようだ。その言葉に彼の父は眼を剥く。

「うちは神道やで! 本家が五月蠅くいってくるぞ!」

(う、彼の京都の本家が出てきた)

「本家のあっちゃんだって、ホテルの教会であげてたやん」

 すかさず大陽くんが、そんな反論を試みる。

「そういやそうやな、ならええか」

 (いいんだ、それで)

 料理が来る前だけど、もの凄い勢いで物事が決まっていく。

 そして、料理がきたことで、話し合いは一旦お預けになる。とりあえず陽気な母親同士が楽しそうに盛り上がっているから間は持った。しかし、父親同士、なんで互いに目も合わせないし喋らないんだろうか?

 食事が終わり、珈琲のお代わりを飲みながら、落ち着いたところで話し合いが再開する。

 式は秋ごろを目処にして、仲人も立てないということ。入籍もそれに合わせて、結婚式は教会式で、引っ越しも式のチョット前くらいでという感じになった。

 本当はどさくさに紛れて、大陽くんとマンションで先だって一緒に暮らしちゃおうかなとも若干思っていた。しかし両方の父親に『一緒に暮らすのは、結婚してからやで! そういうことはチャンとせんとな』と目も見開かれて釘を刺されてしまったので断念することにした。

 家をちゃんと出るというのは意外に大変なものらしい。

 そして、私達は無事、結婚式における難関というべきゾーンを突破することができた。

 結婚イベントのうち、プロポーズと両家顔合わせの両方を、庶民的にファミリーレストランで行ったのは私くらいなのかもしれない。

家族会議

監督:島津保次郎

原作:横光利一

脚本:池田忠雄

キャスト:佐分利信

鈴木歌子

志賀靖郎

及川道子

高杉早苗

桑野通子

高田浩吉

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