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ゼクシィには載ってなかった事  作者: 白い黒猫
避けて通れないご両親へのご挨拶
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見えない恐怖

挿絵(By みてみん)


 三人で、この近所でも評判のエチオピア風のカレーを食べさせてくれるというお店に行くことにした。

 お店に入った瞬間にスパイスというか漢方薬のような香りがする。

 ネットではそれなりに評判なものの、入るのは初めて。期待半分、不安半分の状況で。二人も物珍しそうに、エチオピアっぽいであろう店内の様子を見回している。

 辛さの基準が初めてのお店だけに分からず、私は一辛。黒沢明彦は標準、実和ちゃんはマイナス一辛を注文することにした。

「そういえばさ、月さんは幼なじみでしたよね。だから相手のご家族との初顔合わせって楽な感じだったんですか?」

 実和ちゃんが、料理を待つ間にそんな事を聞いてきた。

 確かに私の所は同い年で同じ小学校に通っていた二人。同じクラスだったのが半年だけ。そんな状況な為にブッチャけ、子供時代の旦那様の事殆ど覚えていない。馴染んでもいないのに、幼なじみと呼んでいいのだろうか?

「いや……。挨拶の時が初顔合わせでね。しかも私の場合、それぞれの両親への挨拶の間隔が一週間で。さらにその一週間後に、両家顔合わせというトンデモないハードスケジュールで進行しちゃいました」

 実和ちゃんが、目をまん丸にして私を見る。

 結婚の経緯から私の旦那様のトンデモナイ挨拶を知っている黒沢明彦も首を傾げている。

 そろそろ相談する相手を間違えているという事に気が付いてきたのだろうか?

 そう、そういうイベントが一気にあった。その為、不安と緊張に晒され眠れなかった。食欲も減退し一ヶ月でかなり痩せたくらい胃が痛かった時期だった。

「もしかして、その次の週に、結納で、次の週に入籍とか言わないよね」

 黒沢明彦がニヤニヤと意地の悪い笑顔でそんな事言ってくる。

 私は苦笑して首を横にふった。流石にそれはない。 

「いや、面倒だから、結納もしなかったの」

 実和ちゃんは、首を傾げる。

「そんな事出来るんですか?」

「結局、結婚ってそれぞれの家同士の考えのすりあわせだから。両家はそれで納得していたらどうとでもなる事なのよ!

 今関東では半分以上の人が仲人立てないけれど、地域によってはそうはいかないし」

 実際名古屋とか京都の人だったら、結納は大事な儀式だろうし。

「そういえば、月ちゃんの式、仲人もいなかったね」

 『そうそう』と私は頷く。姉が毎年仲人に対して、お歳暮お中元を出している。そういう話を聞いて面倒そうだなと見ていただけに、私らは立てなかった。

「俺達はどうしようか?」

「月さんにやってもらうとか?」

 実和ちゃんはノンビリと、あり得ない事を言ってきた。仲人は、もっと人格者で自分達の結婚の良き見本になってくれる人を選んで下さい……。

 そんな事言っていると、カレーが運ばれてくる。これがエチオピア風なようだと繁々見るが見た目はカレー。

 普通のカレーとは違って、若干香辛料が違うようでいわゆる普通のカレーの香りがしない。

 食べてみると、辛いというより香辛料の香りがかなりストレートに感じる味だった。

 ふと前を見ると、実和ちゃんの顔が真っ赤になっている。実和ちゃんにとってココのカレーは香辛料が多くて、効き過ぎたようだ。

 汗を拭きながら、それでも一生懸命カレーを食べる。そんな婚約者を黒沢明彦は微笑ましそうに見つめている。なんかこういう雰囲気いいなと私までほのぼのしてしまった。


 ※   ※   ※


挿絵(By みてみん)


問1 以下の会話文で、父親がどういった心情なのかを書き出しなさい。


息子 『そうだ、俺、結婚する事にしたから』


父親 『ふうん』


息子 『月見里さんってオトンは知っているよね? 九州時代に確か職場一緒だった』


父親 『……ああ、おったな』


息子 『で、今週末ご挨拶行ってくるから』


父親 『そか』


息子 『家はその次の週でいい?』


父親 『ああ』


息子 『じゃあ』


 東大入試並に難しすぎる問題である。我が家のイベントから間髪入れずに、大陽渚の両親との対面を告げられた。

 大陽渚の家族が私との結婚をどう考えているのかを知りたくて電話で聞き出した。その答えがコレだった。

「マズイ! 髪も今、ボサボサだし、恥ずかしくないお洋服も用意しないと……」

 私の言葉に、大陽渚はハハハと笑う。

「ウチの親、そんな事気にするタイプじゃないし、気使う必要もないよ」

 そりゃ、大陽渚にとって、自分の両親はそうでしょうが……。

 父親から、大陽渚のお父さんがかなりの偏屈だとかいう話も聞いている。

 脳天気で会いに行ってよい相手とも思えなかった。

「なぎ左右衛門さんのお父さん、お母さんってどんな感じ?」

 恐る恐る聞いてみる。

「オトンは禿げていて、オカンは暢気で脳天気って感じ」

 『禿げ』って……人間性聞いたのですが……。

  思ったほどの情報を聞き出せないまま、日曜日に慌てて母と洋服を買いに行った。そして美容院で恥ずかしくないようにカットしてもらい、次の土曜日に臨む事になった。

見えない恐怖

原題:BLIND TERROR

製作国:1971年イギリス映画

監督:リチャード・フライシャー

脚本:ブライアン・クレメンス

キャスト:ミア・ファロー

ドロシー・アリソン

ロビン・ベイリー

ダイアン・グレイソン

ノーマン・アシュレイ

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