第74話【真実の共有】
荘厳な講堂に、Sクラスの生徒たち全員が集められていた。
一年、二年、三年――各世代を代表する最上位の才覚が並び立ち、その空気は緊張に張り詰めている。
壇上には、学園長とセシリア教官。そして、その傍らに立つユウマとアカネ。
生徒たちのざわめきが収まるのを待って、学園長が口を開いた。
「……諸君。昨夜、王都近郊にて“魔人”が確認された」
その一言に、場が凍りつく。
瞳のない魔物、魔族という言葉すら馴染みの薄い者も多い。だが“魔人”という新たな脅威の響きは、誰の耳にも重く響いた。
「報告にあった剣の魔人は、結界を張り巡らせ、我らを外界から隔絶した。その戦闘において、多くの被害が出た。……だが同時に、重要な発見もあった」
セシリアが前に出る。
疲労の色を隠せぬ面持ちだが、その声は毅然としていた。
「瞳のない魔物も、魔族も……通常の攻撃では完全に消し去ることはできない。だが――この場にいる二人、アカネ・クロガネとユウマ・イチノセのみが、それを“消滅”させる力を持っている」
驚愕と疑念のざわめきが広がった。
「なぜ二人だけが?」
「どういう仕組みだ……?」
三年の主席イグニスすら、眉を寄せて唸る。
学園長は首を振り、言葉を断ち切るように告げた。
「理由は伏せる。だが事実として――この二人が唯一、奴らを根絶できる。ゆえに今後の戦いでは、彼らを軸とすることになる」
講堂の空気が一段と重くなる。
それは畏怖であり、同時に二人に向けられた期待と重圧だった。
一年Sクラスのみ残されて
報告が終わると、上級生たちは解散させられた。
だが一年Sクラスだけは講堂に残される。
壇上から降りたユウマは、仲間たちの前に立った。
エリカ、リナ、ショウ。
レイジ、ハルト、カズマ、サクラ、マユミ。
そして紅紫の瞳でじっと見据えるユリナ。
全員の視線を受け、ユウマは深く息を吸った。
「……みんなに隠していたことがある」
声が震えそうになるのを、必死に抑える。
「俺の力は――“模倣”だ。見た魔法を、条件が揃えば再現できる」
沈黙。
サクラの瞳がわずかに揺れる。
マユミは興味深そうに目を細め、ハルトとカズマは顔を見合わせる。
「一定距離にて発動を最後まで視認した魔法を再現し、一度模倣した魔法は無制限に使用できる。そして模倣前より威力が底上げされる、違うか?」
レイジが淡々と告げる。
「どうしてそれを…」
驚きを隠せないユウマ。
ユリナの瞳は、冷たくもどこか愉悦を帯びていた。
「戦場で使っていたじゃない。隠す意味なんて、最初からなかったのよ」
「……そうかもしれない」
ユウマは頷く。
「でも、怖かった。平凡でいたいから……力を隠すことが平穏につながると思ってた」
その言葉に、リナが静かにノートを閉じる。
「先日の戦いで違うと気づいたんだ、隠している限り、仲間と壁ができるだけ。
だから俺は打ち明けようと思った。これからは、この力でみんなと一緒に使っていきたい」
言葉が講堂に落ちた瞬間――一年Sクラスの空気が、静かに変わった。
魔人への恐怖も、ユウマの力への疑念も、確かに残っている。
だがそれ以上に「共に立つ」という思いが、一人一人の胸に芽生え始めていた。




