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第72話【告白の決意】


 王都学園の正門をくぐったとき、馬車の中に残っていた重苦しい空気は、まだ誰の口からも言葉になっていなかった。


 治療棟に負傷者が運ばれていくのを見届けると、セシリア教官は短く告げた。


「――私は学園長に報告に行く。イチノセ、一緒に来なさい」


 唐突な指名に、ユウマはわずかに驚きながらも頷いた。


 静謐な室内に、重い報告が並べられていく。

 セシリアの口から語られるのは、ダンジョン外での剣の魔人との交戦、結界の発生、Sクラス生徒たちの被害。


「……以上です」


 最後に深く頭を垂れると、学園長は長い沈黙の末に言葉を落とした。


「ついに“魔人”が表舞台に姿を現したか。しかも儂が撃退した剣の魔人が最悪の形で、じゃな」


 重苦しい響きが、室内の空気をさらに冷やす。


 セシリアが報告を続ける。

「私の切り札にて魔人を両断することはできましたが、魔人は力を減少させずに再生しました。

 結界内では魔力が他へ霧散することがないようです」


「儂達が撃退した際は結界など使用していなかった、魔人も進化しているということか」

 学園長が重い言葉を紡ぐ。


「被害は大きいですが、剣の魔人との会話で得られた情報は甚大です。彼は力を求めているだけで人への悪意はなさそうでした。

 しかし、剣の魔人以外に複数の魔人が結託している組織があるとのことです。彼も誘いを受けたとのことですので、剣の魔人の出現以前から存在している魔族の可能性が高いと考えられます」


 セシリアの魔人への報告を受け、学園長室の空気が一層重くなった。



 だがユウマは、胸に抱えた決意を抑えきれなかった。


「……あの、俺からも一つ……相談があります」


 セシリアが振り返り、学園長が鋭い眼差しを向ける。


 視線に射抜かれながらも、ユウマは言葉を紡いだ。


「模倣の力を……もう隠し続けるべきじゃないと思います。少なくとも、一年Sクラスの仲間には打ち明けるべきだと」


 沈黙。


 学園長は顎に手を添え、深く考えるように目を閉じた。


「その力は制御しきれず暴走する可能性も孕んでいる、そうした可能性を理解してなお――打ち明けたいのだな?」


 ユウマは拳を握り、力強く答える。


「はい。隠していては、逆に仲間と壁を作るだけです。平穏でいたいからこそ、皆と共に戦えるように……共有すべきだと思います」


 その言葉に、セシリアの瞳が揺らいだ。

 やがて彼女は静かに口を開く。


「ならば覚悟しなさい。仲間に明かすということは、ただの告白じゃない、“契約”になる。裏切れば、信頼も居場所も一瞬で失う」


 ユウマは深く頷く。


「それでも――俺は伝えます」


 学園長は重々しく頷いた。


「よかろう。ならば瞳のない魔物、魔族、魔人、そして転生者についても――必要な範囲で共有させる。お前たちがこれから立ち向かうには、無知では済まされぬ」


 その声は、ただの学園の長ではなく、王国の未来を託す者の響きだった。


「場は私が設ける。……その時、迷うなよ、ユウマ・イチノセ」


 ユウマは静かに息を吸い込み、はっきりと答えた。


「はい」


 その一言は重く、だが確かな灯火のように響いた。

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