第64話【抗う刃と光】
火花が散る。
剣と剣が激突し、セシリアと魔人の死闘はなお続いていた。
だが、セシリアの額に浮かぶ汗は次第に深く刻まれ、押し返される一瞬が増えていく。
「……ちっ」
セシリアは咄嗟に後退し、剣を振り抜いた。
同時に、無属性の魔力が奔流となって走り、斬撃と重なって魔人を襲う。
「……ちっ」
魔人の口角が吊り上がる。
「剣士かと思ったら……魔法も使いやがるのか」
刹那、男の笑みが冷たく歪んだ。
「――つまんねえな」
黒刃が振るわれ、飛翔した魔力を一刀のもとに切り裂く。
セシリアの無属性魔法は、火花とともに掻き消えた。
「……!」
セシリアの双眸が揺れる。
剣技に加えて魔法の連携すら通じない。徐々に劣勢へと追い込まれていく。
その時。
「――《ブレイヴ・ライト》!」
黄金の光がセシリアの身体を包んだ。
後方で剣を構えていたハルトが、祈るように叫んでいた。
「今は先生に――勝ってもらうしかない!」
光が筋肉を強化し、剣速を一時的に引き上げる。
セシリアの動きは再び冴えを取り戻し、刃が火花を散らした。
だが、魔人の目に怒気が閃く。
「……差しの立ち合いに、水を差すつもりか」
その声は冷酷だった。
次の瞬間――黒刃が振り下ろされ、斬撃の奔流が戦場全体を覆う。
「くっ……!」
咄嗟に防御の結界、盾、鎖、氷壁が展開される。
だが、衝撃はあまりに重く、Sクラス生たちは次々に吹き飛ばされた。
「ぐっ……!」
「きゃっ……!」
土煙にまみれ、呻き声があちこちに響く。
なお立っていたのは――。
剣を構えるレイジ。
紅紫の瞳を煌めかせるユリナ。
杖を握りしめるエリカ。
そして、炎を纏う準備を始めていたユウマ。
四人の姿だった。
魔人の眼差しが、ゆっくりと彼らへ向けられる。
「……ほう。まだ立てるやつらもいるのか」
その声には、愉悦と殺意が同居していた。
戦場の空気は、再び張り裂けんばかりに張り詰めていった――。




