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第5話【呼び出しと顔合わせ】

 入学式が終わり、教員の指示で新入生はチーム顔合わせの場へと移動していた。

 ざわめく列の中で、俺も流れに合わせて歩いていた――そのとき。


「……イチノセ。ちょっと来なさい」


 背後から冷たい声が響いた。

 振り返ると、赤い髪を揺らすエリカ・フレイムハートが立っていた。


「なんだ、今は顔合わせに――」


「いいから」


 有無を言わせぬ口調でそう言うと、俺の腕を掴み、人の流れから外れて歩き出す。

 逆らう隙もなく、引きずられるように中庭の奥――人目のつかない場所へ。



「ここならいいわね」

 立ち止まったエリカは、真っ直ぐに俺を睨み据えた。


「……試験のときのことよ。あの火球――どう考えても私のじゃない」


 来た。

 やっぱり気づいていたか。


「なにを言ってるんだ。俺のファイアボールが、たまたま重なっただけだ」


「誤魔化さないで。あんな威力、今の私には出せない。

 それなのに……あんたは平然と隣で知らん顔をしていた」


 鋭い視線に射抜かれ、息が詰まる。

 その瞳には、怒りと疑念、そしてほんのわずかな恐怖が混ざっていた。


 どうする? 本当のことなんて言えるわけがない


 沈黙を守ろうとしたが、エリカはさらに踏み込んでくる。


「もし本当に無関係なら……証明してみなさい。

 次の模擬戦で、あんた自身の力を見せなさい」


 挑発的な口調。だが、その奥には必死さがあった。

 “偽りの天才”と祭り上げられることへの恐怖。

 そして「本当の自分」を示したいという焦燥。


「…………」

 俺は返す言葉を見つけられなかった。


 そのとき、遠くから教員の声が響いた。

「新入生は集合! チームごとに並べ!」


 エリカはわずかに目を細め、最後にもう一度俺を睨みつけてから背を向けた。


 やはり避けられない。彼女の疑念は、必ず俺に向かってくる


 冷たい予感を抱えながら、俺も足を前に進めた。


 集合場所の訓練場に向かうと、すでに数組の新入生が集まっていた。

 教員の声が響く。

「各クラスから一名ずつ、四名で構成される混合チーム――呼ばれた者はここに集まれ」


 名前が呼ばれるたび、受験生たちが前へ出ていく。

 やがて――


「Sクラス、エリカ・フレイムハート」

「Aクラス、リナ・アクアリス」

「Bクラス、ショウ・ストームウィング」

「Cクラス、ユウマ・イチノセ」


 ついに俺たちのチームの名が読み上げられた。


 正面に立ったのは、淡い水色の髪を持つ少女。

 落ち着いた雰囲気で一礼する。

「リナ・アクアリスです。……よろしくお願いします」


 その丁寧な口調と静かな微笑みで、張り詰めた空気が少し和らぐ。

 彼女が「水の本家」の名を持つことは、周囲のざわめきからも明らかだった。


 次に、茶髪をかき上げながら朗らかに笑った少年が声を上げる。

「ショウ・ストームウィングだ! いやー、まさか俺がこんな豪華メンバーと組めるとはな!」

 陽気な調子に、場の緊張がさらにほぐれていく。


「……ユウマ・イチノセだ」

 俺は小さく名乗るに留めた。


 だが隣に立つエリカは、一歩前に出て堂々と宣言する。

「エリカ・フレイムハートよ。……みんな、足を引っ張らないで」


 その強気な言葉に、ショウが「うわ、いきなりキツいな!」と笑い、リナは「まぁまぁ」となだめる。

 こうして、俺たちのチームは最初の顔合わせを終えた。


 教員が続けて説明する。

「初対面の者も多いだろう。だが力を知り合わねば連携もできん。これよりチーム内で模擬戦を行う」


 一斉にざわめきが広がる。


 俺たちのチームも例外ではなく、くじ引きで最初の組み合わせが決まった。

 ――リナ・アクアリス vs ショウ・ストームウィング。


「お、俺からか!」

「ええ、全力で来てください。……手加減はしませんから」


 控えめな口調だが、リナの瞳には静かな決意が宿っていた。


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