表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/83

第48話【消滅の条件】

 ――異形の群れが広がり、黒い靄を撒き散らす。

 レイジの剛剣でも、マユミの氷でも、サクラの風でも――倒しても倒しても、靄が移り変わり、瞳のない魔物が次々と生まれていく。


 戦場に重苦しい沈黙が走った。


「……なら、私が無効化するしかないようね」


 紅紫の瞳が妖しく光り、ユリナが前に出る。


「《ダークネス・ゲイズ》」


 闇の視線が放たれる。しかし――異形たちは一歩も退かず、虚ろな眼窩で立ち尽くしていた。


「昔と同じ……やはり、通じないみたいね」

 ユリナの声は冷ややかだった。だが、わずかに噛みしめた唇がその内心を物語っていた。


 小さく吐息を漏らし、紅紫の瞳を細める。

「……やはり、アカネ先輩は無駄なことを言わなかった」


「――なら、私が縛る!」


 エリカが杖を掲げた。


「《クリムゾン・チェイン》!」


 炎が縒り合い、赤熱の鎖となって走る。

 今度は爆ぜなかった。完全に形を保ち、異形の身体を絡め取る。


「……崩れない……!」

 エリカの頬を汗が伝う。だがその鎖は軋みながらも確かに異形を封じていた。


 サクラは扇を揺らし、優雅に笑みを浮かべる。

「ふふ……これでようやく“本物”と呼べますわね」


 マユミも静かに頷いた。

「術式の完成度が桁違い……。彼女は確実に壁を越えた」


 その光景を見ながら、ユウマは心の中で呟く。


 思い出せ。前にダンジョンで遭遇した時……俺は《フレイム・ランス》と《ウインド・ストーム》を重ねて、あいつを消し去った。なら――まずは同じ条件を、確かめるべきだ


 炎を練り上げ、槍を形作る。


「――《フレイム・ランス》!」


 灼熱の槍が、炎鎖に縛られた異形を貫いた。


 瞬間、魔物の身体は黒い靄を撒き散らすことなく――光の粒子へと砕け散る。

 完全な、消滅。


「……ただの炎槍で……?」

 レイジの目が細められる。


 サクラは扇を口元に当て、涼やかに言葉を紡いだ。

「これは威力の問題ではありませんわね。……何か、“別の理”が働いている」


 マユミも静かに分析を重ねる。

「魔力の性質か……あるいは、存在そのものに関わる条件。――少なくとも、試す価値はありそうね」


 視線が自然と、ユウマに集まる。


 ただ紅紫の瞳だけは、冷たく揺らめいていた。


 ユリナは囁くように言った。

「……やはり、アカネ先輩はすべてを見抜いていたのね」


 次の瞬間、戦場は再び靄の渦に包まれ、息を呑む気配だけが広がっていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ