表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/83

第47話【異形の連鎖】

 ――轟音と共に、魔物の群れが地を踏み砕きながら飛び出してきた。

 牙を剥く狼、甲殻を纏った蟲、地を揺らす巨躯のオーク。闇の中から数十体が一気に溢れ出す。


「来るぞ」

 レイジ・ヴァルハルトが剣を抜き放つ。


 まず動いたのはユリナ・ダークネストだった。

 紅紫の瞳が妖しく光ると同時に、闇が波紋のように広がる。


「《ダークネス・ゲイズ》」


 視線を浴びた魔物たちが一斉に崩れ落ちた。獣であったとしても瞳がある限り恐怖に支配され、爪を震わせ、意識を失い動きを止める。


 続けざまに、レイジが一歩で間合いを詰め――。


「斬り伏せる」


 剛剣の一閃。

 土煙の中、数体のオークが胴ごと両断され、甲殻の蟲も抵抗すらできずに断ち割られた。


 闇と剣。闇で意識を失ったところを剣閃で両断する。

 二人の力は、まさに圧倒。


 背後で控えていた他のSクラスも、淡々とその様子を見つめていた。


 サクラ・エーデルリーフは扇を軽く揺らし、優雅に肩をすくめる。

「ふふ……これはもう、わたくしたちの出番はございませんわね」


 マユミ・シルバーレインは氷の杖を軽く下ろし、冷静に呟いた。

「闇と剣で十分。今は彼らの舞台でしょう」


 エリカも唇を結び、内心の焦燥を隠しながらも頷いた。

「……今は見届けるしかない、か」


 その空気を切り裂くように、群れの奥から異様な気配が滲み出す。


 のっぺりとした顔。瞳のない虚ろな眼窩。

 ただそこに在るだけで、空気がざらつくような異形の魔物。


「闇がざわめいていたのは、コイツがいたからなのね……」

 ユリナの紅紫の瞳が細められる。


 彼女はちらりとユウマを見やり、低く呟いた。

「アカネ先輩は、この魔物をあなたと私で対処しろと言っていた……何か理由があるのでしょうね」


「理由……?」

 ユウマは喉を鳴らす。だが次の瞬間――。


「貴様に頼るまでもない、俺がやる」


 重い声と共に、レイジが前に出た。

 返事も待たず、瞳のない魔物へ突進する。


「アカネ先輩の言うことが聞けないっていうの?」

 ユリナが制止をするがレイジは止まらない。


 黒鉄の剣が振り下ろされ、刃は抵抗なく異形を貫いた。

 肉体は両断されて地に伏す。


 レイジは血を払うと吐き捨てた。

「俺一人で十分だ」


 だが――。


 地に沈んだはずの異形から、黒い靄が立ち上る。

 煙のように広がったそれは、周囲の魔物に次々と取り憑いていった。


 狼の瞳が落ち、オークの眼窩が虚ろに変わる。

 数瞬のうちに、周囲の魔物たちの瞳がすべて失われ――異形の群れへと変貌していった。


 サクラが扇を口元に当て、息を呑む。

「これは……ただの力押しでは済みませんわね」


 マユミは氷を練り上げながら静かに告げる。

「厄介ですね……。消したつもりが、むしろ増えている。魔力そのものの質も変質しているように感じます」


 そしてエリカが、はっと顔を強張らせた。

「待って……! 前に私とユウマがダンジョンで遭遇したとき、確かに“瞳のない魔物”を倒したの。あの時はこんなこと、起きなかった……!」


 ユリナが紅紫の瞳を細め、冷たく囁いた。

「……やはり、アカネ先輩が無駄な指示をするはずがなかった」


 圧倒の戦いは、異形の連鎖によって新たな局面を迎えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ