第43話【優雅なる共演】
王都学園・訓練場の別区画。
夕陽が差し込み、舞台のように整えられた石畳の上に、サクラ・エーデルリーフの小隊が集っていた。
淡い金緑の髪を揺らしながら、サクラは仲間たちを見渡す。扇を閉じ、静かに口を開いた。
「――前回の敗因は、わたくしひとりの力で押し切ろうとしたことですわ」
三人の顔に動揺が走る。
防御役のシオン・フェリードは驚きに目を見開き、真面目さゆえに責任を感じたのか拳を固く握る。
突撃担当のガイ・バーンズは「俺たちのせいで……」と唸り、困惑を隠せない。
戦術補佐のアヤ・ドランフィールドは眼鏡を押し上げ、冷ややかに「まさかサクラ様が敗因を口にされるとは」と皮肉を洩らした。
サクラは涼やかに扇を掲げ、仲間たちを制した。
「違いますわ。あなた方に落ち度はありません。敗因は単純――“連携不足”です」
薄緑の瞳が真っ直ぐに輝き、仲間一人ひとりを射抜く。
「フレイムハートのチーム。あの黒髪の少年を中心にした四人の連携は見事でしたわ。個々は未完成でも、互いを支え合い、補い合っていた。だからこそ、勝利したのです」
シオンは悔しげにうつむき、アヤは言葉を飲み込む。
ガイは拳を握りしめ、雷の火花を散らしていた。
サクラは口元にかすかな笑みを浮かべ、続けた。
「わたくしがただ舞い続けるだけでは駄目。あなた方の力を引き出し、わたくしの舞台に組み込む。それが“真の優雅”ですわ」
シオンが息を吐き、決意を宿す。
「なら、俺は防御を徹底します。サクラさんが舞える空間を必ず作る」
アヤは小さく肩をすくめ、冷静な声を投げる。
「では私は戦況を分析し、最適な指示を。舞台の譜面を書くのは、私の役割ですから」
ガイは豪快に拳を打ち鳴らし、雷を走らせた。
「だったら俺は突撃あるのみだ! 雷の拳で前を切り開いて、サクラさんを最高に輝かせてやる!」
その言葉に、サクラは満足げに微笑んだ。
「よろしい。では――特訓を始めましょう。
わたくしの風は、あなた方を“ただ守る”のではなく、“力を引き出す風”といたします」
訓練場に旋風が巻き上がる。
サクラは扇を胸に当て、静かに目を閉じた。
「……ユウマ・イチノセ。あの黒髪の少年は、わたくしの舞を模倣し、炎を纏わせて進化させました。
ならば――わたくしは、仲間を舞台に立たせてみせますわ」
言葉と共に扇を翻す。
「《テンペスト・ガーディアン》」
その瞬間、仲間たちの身体に風がまとわりついた。
シオンの土の盾は疾風に包まれ、鉄壁にして軽やかな壁となる。
アヤの氷の術は風に導かれ、鋭さと広がりを増して標的を絡め取る。
そしてガイの拳には風と雷が宿り、突撃の度に稲光と暴風が咆哮した。
「おおっ!? 体が軽ぇし、拳が雷鳴みてえに轟くぞ!」
ガイが驚愕の声を上げる。
「風が氷を導いてくれる……射程も精度も、今まで以上です」
アヤの瞳に光が宿る。
「盾を展開しながらでも、素早く動ける……!」
シオンの声に確信が滲んでいた。
三人の姿はまるで“風の騎士”そのもの。
サクラが生み出した幻影ではない――実在する仲間が、彼女の風に包まれて舞っているのだ。
サクラは薄く微笑む。
「ええ、これでよろしい。舞台に立つのはわたくし一人ではなく、あなた方全員。
これこそが――わたくしの新しい舞踏ですわ」
旋風と雷鳴に包まれた仲間たちは、確かに主役のように輝いていた。
フレイムハートのチームが“信頼の連携”で戦ったように――サクラのチームは“優雅なる共演”として歩み始めたのだった。
サクラさん、回を重ねる毎にキャラが深まり、お気に入りのキャラになってきました。




