第41話【余韻とさざめき】
すべての試合が終わり、静まり返った大講堂にセシリアの声が響いた。
「――以上で一年生のチーム対抗戦を終了とする」
凛とした声音が場を圧し、観客席に緊張が走る。
「今回の戦いで各自の実力は十分に示された。だが勝敗に惑わされるな。重要なのは連携の中で己の役割を果たせるかどうかだ」
教官の視線が順に生徒たちへと注がれていく。
「マユミ・シルバーレイン。氷による圧倒的な制圧力は評価できるが、仲間を捨てる戦術が常に最適とは限らない」
「ユリナ・ダークネスト。個の力は抜きん出ているが、連携を欠けば敗北を招く。
先のダンジョンでの行動に対しての反省が見受けられない」
「サクラ・エーデルリーフ。優雅に戦いを制したが、怒りに飲まれれば隙が生まれる」
そして、ユウマたちへ。
「エリカ・フレイムハートのチーム。四人の連携は際立っていた。だが個々の力にまだ差があることを自覚し、さらに磨きをかけろ」
淡々とした声色。しかしその一言一言は、生徒たちの胸を強く打った。
夕刻、訓練場の片隅。ユウマたちは輪になって腰を下ろし、試合を振り返っていた。
「……なんとか勝てたな」
ユウマが息を吐く。
「けど、完全に力不足です、不完全な魔法に頼ることになってしまいました」
リナが冷静に告げる。
「私も……結局ユウマに助けられてばかり」
エリカが唇を噛む。
ショウは黙って拳を握りしめていた。だがやがて顔を上げ、言葉を絞り出す。
「正直、あのときは悔しかった。同じ風なのに、サクラさんの力は俺の何倍も先にあって……全然追いつけないって思った」
三人が静かに耳を傾ける。
「でもな、あの人を見てはっきり分かった。――俺が目指すべき高みはそこにあるって。いつか必ず、風であそこに並んでみせる」
真っ直ぐな言葉に、ユウマは口元を緩める。
「だったら、俺たちで押し上げてやるよ。全員でな」
リナも頷き、エリカの瞳にも再び炎が宿った。
重苦しい空気は消え、新しい決意が四人の胸に芽生えていた。
その夜。王立学園寮の五階、Sクラス専用ラウンジ。
豪奢な燭台に灯が揺れ、ソファにはSクラス生たちが集まっていた。
葡萄酒にも似た香りの茶を口にしながら、昼間の対抗戦を語り合う。
「ユリナは来ていないのか」
誰かが問う。
「彼女はこういう場を好まない。……どうせクロガネ先輩の傍にいるのでしょう」
別の生徒が肩をすくめる。
そのやり取りを切り裂くように、低く響く声がした。
「くだらん話だ」
レイジ・ヴァルハルトが椅子に深く腰を下ろし、腕を組んだまま吐き捨てる。
「あの程度の小細工など、視線を合わせなければ済む話だ。闇視だか何だか知らんが、俺の剣の前では意味を成さない」
傲慢な物言いに数人が眉をひそめたが、誰も反論しなかった。――彼ならば本当にやり遂げると分かっていたからだ。
「それよりも気になるのは……」
別の生徒が声を上げる。
「サクラ、あの黒髪――ユウマ・イチノセ。お前はやつの力の一端を知ったのではないか?」
サクラは扇を開き、優雅に笑みを浮かべる。
「……わたくし? ええ、確かに彼の“片鱗”には触れましたわ」
「では、その力とは?」
ラウンジの空気が張り詰める。
しかしサクラは涼やかにかわした。
「自身で相対して確かめてみればよろしいでしょう。……わたくし、人様の秘密を勝手に喋るほど下品ではありませんの」
優雅に吐き捨て、扇で口元を隠す。
他の生徒たちは顔を見合わせたが、それ以上追及はできなかった。
尊大でありながら気品に満ちたサクラ。
冷徹に切り捨てるレイジ。
不在のまま存在感を放つユリナ。
――Sクラスのラウンジには、次代の覇を競う若き強者たちの影が色濃く漂っていた。
投稿を始めて1週間程度経ちましたが、1日4話投稿は無謀でした。
(本業が全く終わらないことに…)
読んでくれている方には申し訳ないですが、明日から投稿頻度を少し落とします。
1日1話投稿を目指して続けていきますので、よろしくお願いいたします。




