第40話【予想外の決着】
サクラは鎖を振りほどき、風で煙を散らす。
その頬には赤い傷が一筋。
扇で口元を隠し、薄緑の瞳を伏せる。
「……まあ。私に血を流させた方が、この学園にどれほどいるでしょうか」
その声音にはまだ優雅さがあった。だが、舞台に満ちた魔力の流れは――静かな怒りに震えていた。
空気が震動し、サクラの周囲に巨大な渦が生まれる。
観客席の空気すら押し潰すような圧。
「……再現されようと、構いませんわ。一瞬の隙も与えずに風の王にて跡形もなく吹き飛ばして差し上げます」
彼女の唇が形を描く。
「《グランドシル――」
そのとき。サクラの扇が止まった。
扇の奥で唇がかすかに震え、薄緑の瞳に冷静な光が戻っていく。
「……私ったら。はしたないこと」
小さく吐息を漏らし、練り上げていた魔力を霧散させる。
舞台の空気が一気に和らぎ、観客たちの緊張が解けていった。
サクラは背筋を伸ばし、優雅に頭を傾ける。
「わかりました。……私たちの負けでいいですわ」
観客席にどよめきが広がる。
だが彼女の声には揺るぎない気品があった。
「認めてあげます。あなたたち四人がかりであれば――私の足元程度には、届き得るのだと」
言い終えるとサクラは振り返り、会場外で倒れ伏したままの仲間たちを見やった。
その薄緑の瞳から、先ほどまでの怒気は消え、慈愛の光が宿る。
「よく耐えてくれましたわね。あなたたちが繋いでくれたおかげで、私は存分に舞えました」
柔らかな声色でそう告げると、扇をひと振り。
風がやさしく仲間たちを包み込み、立ち上がれぬ彼らと共に退場していく。
その動きは舞踏会のエスコートのように優雅で、しかも確かな温もりがあった。
「心配しなくてよろしい。……後は私が責任を持って、癒しの手配をいたしますわ」
尊大な物言いの裏に、確かな気遣いと誇りがにじむ。
彼女を慕うチームメイトにとっては、その一言こそ何よりの恩寵だった。
「勝者――エリカ・フレイムハートのチーム!」
セシリアの声が響いた瞬間、会場は大歓声に包まれた。
勝利の余韻に浸るユウマたち。
だがその胸中には、サクラの最後の言葉が重く残っていた。
――四人がかりで、ようやく足元に届いただけ。
勝利と同時に刻まれたその評価は、彼らの次なる挑戦の礎となっていくのだった。
ここで事前にセシリアが説明していた降参したら退場のルールがいきてきます。
Sランクの強さを維持しつつユウマたちを勝利するにはこれしかありません。
1戦目とはまた異なりますが、性格面での相性による勝利ですね。




