第34話【闇の眼】
第二試合――ユリナ・ダークネストのチームとカズマ・フェルドランスのチーム。
舞台に上がった瞬間から、観客席には張りつめた沈黙が広がっていた。
「いよいよか……」
ショウが息を呑む。
「前の試合は相性勝ちでした。今度は純粋な力の衝突です」
リナが冷静に告げる。
エリカは険しい顔のまま、ユリナの紅紫の瞳を睨んでいた。
「――試合、開始!」
その合図が響いた瞬間。
空気が重く歪んだ。
舞台の周囲、壁や天井、観客の視界の端に――無数の“眼”が浮かび上がる。
それは闇の中に赤黒く爛々と輝き、どこを向いても見下ろされている錯覚を与えた。
「な、なんだ……!?」
「気持ち悪い……やめろ……!」
観客席に悲鳴が走る。
「《ダークネス・ゲイズ》」
ユリナが呟いた瞬間、舞台にいた者たちが一斉に崩れ落ちた。
カズマも、その仲間も。
そしてユリナの味方さえも。
さらには審判を務めていた教官までも、恐怖に耐えきれず意識を失った。
舞台に立つのは、ただ一人。
紅紫の瞳を輝かせ、静かに立つユリナ・ダークネスト。
彼女は頬にかかった黒髪を払い、薄く微笑んだ。
「……力を示すのに、相手を選ぶ必要があるのかしら?」
観客席が凍り付く中、壇上からセシリアが歩み出る。
「……これ以上は危険だ。勝者――ユリナ・ダークネスト」
その声でようやく、試合は終わりを告げられた。
「な、なんだよ今の……」
ショウが青ざめて呟く。
「視線だけで……この場全体を支配していた」
リナの声も硬い。
「味方すら巻き込むなんて……!」
エリカは唇を噛む。
ユウマは無言のまま、冷や汗を流していた。
……俺を天敵と呼んだ“闇の眼”。あれをもう一度受けたら……
恐怖に押し潰されそうになりながらも、奥底に抗う決意が芽生えていく。
担ぎ出される途中、意識を取り戻したカズマが豪快に笑った。
「ハッ! 負けちまったか……! だが、戦場ならこうはいかねえ!
次は雷でぶっ飛ばしてやるさ!」
その強がりに、観客席は再びざわめいた。
ユリナは彼に一瞥もくれず、ただ紅紫の瞳を伏せて舞台を後にする。
Sクラスの中でも別格の存在――ユリナ・ダークネスト。
その異質な力が、誰の目にも刻まれた瞬間だった。
1章ボスのユリナさん、2章でも格を落とすことなく力を見せつけます。
何を隠そう私のお気に入りキャラです。
カズマさんも弱いわけではなく、ユリナさんがおかしいだけです。




