第33話【氷と光の激突】
大講堂の中央に設けられた特設舞台。
第一試合、マユミ・シルバーレインのチームとハルト・オルディアのチームが向かい合う。
観戦席に腰を下ろしたユウマたちは、緊張混じりの視線を舞台に注いでいた。
「いよいよ始まるな……」
ショウが身を乗り出す。
「マユミさんとハルトさん……どちらもSクラスですし、見応えはあるでしょう」
リナが冷静に呟いた。
エリカは腕を組み、険しい顔で舞台を見つめる。
「――試合、開始!」
審判役の教官が合図を告げる。
ハルトが前に進み出ると同時に、仲間たちの体が淡い光に包まれた。
「《ブレイヴ・ライト》!」
味方の身体能力を底上げする光の加護。剣士が疾走し、魔法使いが詠唱を加速させる。
その姿はまるで物語に語られる勇者のようだった。
「光で仲間を強化する……なるほどな」
ユウマが小さく感心する。
「味方全体の戦力を底上げするなら、確かに勇者型ですね」
リナが頷いた。
一方、マユミは舞台の端に立ったまま、退屈そうに杖を握り、微動だにしなかった。
「おい、全然動いてねえぞ」
ショウが眉をひそめる。
「緻密に戦略を立てるマユミが何もしないなんて……」
エリカが怪訝そうに呟く。
やがて、マユミのチームの仲間三人が次々と倒れ、戦場には彼女一人が残された。
「……やれやれ。面倒ね」
小さく冷たい吐息を漏らし、マユミが杖を掲げる。
次の瞬間、空間が一気に冷え込み、白い息が立ち上る。
足元の石畳に霜が走り、氷の結晶が舞台を覆っていった。
「《フローズン・ドミニオン》」
凍てつく気配が爆ぜ、ハルトチームの生徒三人が瞬時に凍りつく。
動けるのはハルトただ一人。
「仲間を……!」
ハルトが剣を振り上げ、光の刃を放つ。
しかしマユミは氷を磨き上げ、鏡のように変化させていた。
「――返すわ」
放たれた光は氷の鏡に反射し、軌道を変えて逸れていく。
「馬鹿な……!」
ハルトが目を見開いた瞬間、周囲の氷が立ち上がり、迷宮のような檻を形成した。
「《プリズン・ミラー》」
氷の牢獄。壁一面に張り巡らされた氷鏡が光を乱反射させ、ハルトの攻撃を完全に無効化する。
マユミは冷ややかに彼を見下ろした。
「緻密な戦略など立てずとも……私の相手が光のあなたとなった瞬間から、勝ちは決まっていたのよ」
氷鏡に映るハルトの姿は、光を放つ勇者ではなく、出口を失った囚人そのものだった。
剣が氷に弾かれ、ハルトが膝をつく。
「……ぐっ……!」
「勝者――マユミ・シルバーレイン!」
審判の声が高らかに響いた。
「すげえ……!」
ショウが思わず声を上げる。
「仲間が倒れてから動くなんて……普通じゃ考えられない戦い方です」
リナも目を細めた。
「冷静すぎる……。けど、それだけ自分の力に自信があるということね」
エリカは唇を噛む。
ユウマは無言で舞台を見つめる。
……氷と光。相性一つで、Sクラスでもここまで差が出るのか
Sクラス同士でさえ埋められない相性の壁がある――その現実を、彼らは目の当たりにしたのだった。




