第31話【灼熱の竜巻と大波】
対抗戦を一週間後に控えた放課後。
訓練場の一角では、ユウマたち四人が揃って特訓を行っていた。
「《ウィンド・ランス》!」
ショウが前に出て風の槍を放つ。鋭い空気の刃が的を貫いた。
「なるほどな。こうだろ」
ユウマの瞳が光り、同じ魔法を展開する。
同じ威力どころか、僅かに鋭さが増しているのを見て、ショウが「すげえ!」と声を上げた。
「じゃあ次はこれだ! 《ウィンド・ストーム》!」
大気を巻き込み竜巻が巻き上がる。
その瞬間――ユウマは炎と水と風の魔法を同時に重ね合わせた。
「……《フレイム・バースト》《アクア・バリア》《ウィンド・ストーム》――!」
爆炎が水を呑み込み、一瞬で蒸発させる。
生まれた超高温の水蒸気が、凄まじい圧力を伴って膨張し――轟音とともに爆ぜた。
《ウィンド・ストーム》がそれを竜巻に閉じ込め、灼熱と爆発の衝撃波を伴った竜巻が訓練場を蹂躙する。
ごうごうと唸りを上げ、残骸を飲み込み、地面に焦げ跡だけを残す。
ユウマは低く呟いた。
「――《ヴォルカニック・サイクロン》ってとこか」
リナが息を呑む。
「……水蒸気爆発……三属性の複合……。ユウマさん、これは模倣を超えています」
ユウマは肩をすくめる。
「いや、ただの組み合わせだ。俺にできるのは模倣だけさ」
けれど仲間たちは、その一撃が切り札となることを確信していた。
「なら、私も見せる番ね」
エリカが杖を掲げる。炎が縒り合い、鎖の形を成す。
「《クリムゾン・チェイン》!」
今度は爆ぜなかった。炎の鎖はしっかりと形を保ち、ショウの腕を絡め取って動きを封じる。
「うおっ、すげえ! 全然動けねえ!」
エリカは額の汗を拭いながらも、口元を引き結ぶ。
「……これで、仮初なんて言わせない」
ユウマとリナが同時に頷いた。
「……私も、開発中の新しい魔法を試してみます」
リナが一歩前に出て、静かに魔力を練り上げる。
「《タイダル・ウェイブ》!」
轟音とともに膨大な水が宙に現れる。だが流れを形にする前に崩れ落ち、訓練場をびしょ濡れにするだけで終わった。
「……まだ未完成ですね」
リナが肩を落とす。
「もう一度見せてみてくれ」
ユウマが瞳を光らせ、模倣を試みる。
だが彼の術式も途中で崩壊し、水は形を成さないまま消えた。
「……無理だ。完成形が見えないから、模倣できない」
「ええ。術式がまだ組み上がっていないのです。これは私にしか完成させられません」
リナの瞳には悔しさよりも決意の光があった。
「試合までに、必ず形にしてみせます」
三人は顔を見合わせ、頷いた。
特訓の後、四人は円陣を組んで作戦を練った。
「対抗戦、どのチームと当たるかは当日まで分からない。でも――」
ユウマが言葉を切る。
「必ず相手にはSクラス生が一人いる。なら、始まった瞬間にそのSクラス生を叩いて流れを崩すべきだ」
「賛成だな!」とショウ。
「防御は任せてください」とリナ。
「拘束で足を止めるのは私に任せて」とエリカ。
それぞれの役割は明確になった。
前衛=ショウ、支援=リナ、拘束=エリカ、切り札=ユウマ。
そこでエリカが真剣な顔になる。
「ユリナ以外にも、厄介な相手は多いから少し説明しておくわ」
レイジ・ヴァルハルト……剣術特化の武人。魔法を使わずとも一騎当千の強さ。
マユミ・シルバーレイン……氷魔法の使い手。冷静沈着で参謀役。戦術眼に優れる。
カズマ・フェルドランス……雷魔法の豪快さは随一。火力で押し切る力を持つ。
サクラ・エーデルリーフ……風魔法を自在に操り、切れ味鋭い突撃を仕掛ける。
ハルト・オルディア……光魔法の万能型。攻守に柔軟で、支援も可能。
「今回レイジと当たることはないけれど、他の誰が相手でも油断はできない。
開始直後の奇襲で一人を崩せなければ、勝ち目はない」
エリカの言葉に、全員が頷いた。
夜の帳が下りる学園。
それぞれの胸に不安と期待を抱えながら、四人は拳を合わせた。
「やってやろうぜ!」
ショウの明るい声が、夜気に響いた。
――いよいよ、チーム対抗戦の幕が上がる。




