第30話【秘密の共有】
王都学園の大講堂。
一年生全員が集められたその空間は、いつになく緊張に包まれていた。
壇上に立つセシリア教官が視線を巡らせる。
「――“チーム対抗戦”を一週間後に実施する」
ざわめきが広がる。
セシリアは手を軽く上げて場を静めると、淡々と告げた。
「目的は互いの力量を知り、今後の連携を学ぶこと。形式はトーナメントではなく、各チーム一戦のみ。
試合は四対四。戦闘不能になるか降参した時点で、その者は退場とみなす。最後まで立っていたチームを勝者とする。
一年生は七チームなので、三戦行い、一チームは観戦のみで不戦とする。抽選の結果――不戦は、レイジ・ヴァルハルトのチームとなった」
会場にまたざわめきが走った。
「マジか、あのチームとやらなくていいなんて……」
「けど逆に当たるのがユリナ様のチームだったら最悪だ」
「いや、この前の黒髪も怖いだろ」
好奇と恐怖が入り混じった視線が、ユウマの背に突き刺さる。
彼は小さく肩をすくめ、ため息を漏らした。
「……平凡に生きたいんだけどな」
セシリアは最後に付け加える。
「なお、対戦カードは当日まで非公開。各自、万全の準備を整えること」
その言葉をもって解散となり、生徒たちはざわめきながら席を立っていく。
ユウマが出口へ向かおうとしたその時だった。
紅紫の瞳が、真っ直ぐに彼を射抜く。
「……ユリナ」
彼女は歩み寄り、至近で足を止める。
誰にも聞こえないような小さな声で、唇が動いた。
「――また戦えるかしら?」
吐息のような囁きに、背筋が冷たくなる。
挑発ではない。そこには、天敵を見据える獣のような“期待”が宿っていた。
ユウマは答えられず、そのまま彼女が背を向けるのを見送った。
……嫌な予感しかしないな
その後。訓練場の片隅。
ユウマ、エリカ、リナ、ショウの四人は集まり、対抗戦について話し合っていた。
「いやー燃えてきたな! 相手がどこだろうと派手にやろうぜ!」
ショウが拳を突き上げるが、三人は互いに顔を見合わせ、重い沈黙が落ちる。
やがてリナが口を開いた。
「……そろそろ、ショウさんにも伝えるべきです」
「え?」
ショウが首を傾げる。
ユウマは一度目を伏せ、そして口を開いた。
「俺が使える魔法は炎魔法ではないんだ。本当は、見た魔法を模倣し再現できる」
ショウは目を丸くした。
「も、模倣……?」
エリカも続ける。
「本当よ……私の魔法も一部はユウマが使用していたわ。ユウマに助けられなければ、今ここに立ってはいなかった」
ショウはしばし呆然と二人を見比べ――そして、大笑いした。
「なーんだ! そんなことかよ! それどころかすげーじゃんユウマ! そんなカッコいい力なら早く言えよな!」
「そ、そんなこと……?」
エリカが目を瞬かせる。
「仲間の秘密なんて当たり前だろ? ユウマもエリカもリナも、俺にとっては最高のチームメイトだ。だから気にすんな!」
あまりにあっさりとした言葉に、リナは呆れたようにため息をつく。
「……本当に、あなたは深く考えないんですね」
だが、その口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。
その無邪気さこそが、このチームの支えであると、三人もまた理解していたからだ。
――こうして、全員が秘密を共有した。
共犯から、信頼へ。
そして迎えるのは、各チームの力が激突する舞台――チーム対抗戦。
次に彼らが向き合う相手は誰なのか。
緊張と期待を胸に、物語は次の局面へと進んでいく。




