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プロローグ

 小料理探偵雅宗隼人シリーズ 番外編 富山

札幌を離れ師匠に挨拶に来た隼人が、氷見の町で偶然事件に遭遇する。

懐かしい再会と思い出の時、のどかな町に一体何が起きることやら。

事件が思わぬ繋がりに隼人を巻きこむ。

そして、智仁ただ、氷見を堪能しに来ただけなのか・・・・・

 富山県氷見市。八月の太陽がアスファルトを焦がす。

竹田屋旅館の窓から見える海は、陽炎で白く揺らめいていた。

クーラーのあまり効かない畳の部屋で、雅宗隼人がしゅうはやとと消防士の智仁ともひとは、冷えた麦茶のグラスを傾けていた。

「いやあ~アッツいっすねぇ~」

座っているだけで、じっとりと汗が滲み出るような、例年にない猛暑だ。

テレビが、淡々とニュースを伝えている。

「昨日未明、氷見市にある藤子不二雄Ⓐアートコレクションで、展示品の一部が盗まれる事件がありました」

アナウンサーの声が、蝉の声に混じって部屋に響いた。深夜の犯行で、幸いにも怪我人はいないという内容だ。

「さて、と」雅宗隼人は重い腰を上げた。

「そろそろ行くか」

「うっす。腹減りましたね!」智仁が元気よく立ち上がる。

 二人は旅館からタクシーに乗り込み、5分ほどの道を走る。

目指すのは、日吉松下神社近くの、比留間ひるま米穀店。

そこは、隼人の料理の師匠、比留間伝助がいた家だ。

実家の米屋を継がず料理人として氷見の食材と米を最高なご馳走にする事に生涯を捧げた。

今は伝助の長男が早いうちから祖父の下で学び、経営している。

三十年前、放浪の旅の途中で出会った、最高の料理人伝助。

漁師飯屋「伝助亭」を営んでいた伝助の味と人柄に惚れ込んだ隼人は、住み込みで八年間、彼の元で無我夢中で修行した。

伝助が亡くなってから、隼人は数年に一度、こうして墓参りと、彼の家族に線香をあげに氷見を訪れていた。

 智仁はただ、日本一と名高い氷見の魚と米が目当てで、わざわざ有給を取って、この旅についてきただけである。



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