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第一三話

クローンのアンはクローンのジョーの命を救おうと、オリジナルのジョーを殺そうとしますが…

「やああっ!」




 自らを奮い立たせるように出したその掛け声とともに、ボトルの鋭く尖った先端はジョーの胸元へと迫っていく。


 だが、あと数十センチのところで、その刃先は止まる。


 ボトルを握るアンの両手を、ジョーは白刃取りのように両手で掴むと、そのまま力任せに引き寄せて、前のめりになったアンを床に倒した。




 倒れた拍子に手から離れたボトルは、コロコロと床を転がっていく。


 なんとかボトルを取り戻そうとアンは起きあがろうとするが、すぐに首根っこをつかまれると再び床に叩き付けられた。




「うっ!」




 腹を強く打って思わず声を上げるアン。


 痛みに顔をゆがめながら身体を反転させ仰向けになるが、ジョーは容赦なくアンに馬乗りになると、その首を両手で強く絞めた。




「おのれ、妻を犠牲にしてお前を生かしてやったというのに、命の恩人である私を殺そうとするとは、もう許さん!」




 首を締められもがき苦しむアンは、なんとかジョーの手を解こうとするがどうにもならない。




「殺してやる!こんなことならお前のことなど構わずに、妻の命を救えばよかった。」




 ジョーはアンを睨み付けながらも、その目からは涙がこぼれ落ちていた。


 一方のアンは、苦しそうにもがきながら絞り出すようにかすれた声を上げる。




「ジェイ…助けて…」




 それを聞いた瞬間、ジョーは驚く。




「お前、どうしてその愛称を…?」




「ジェイ…助けて…ジェイ…」




 再びアンが苦しそうに声を絞り出すと、ジョーの頭の中で、妻・アンの最後の光景がフラッシュバックとなり蘇る。


 一か月前、このリビングで床に横たわった妻は苦しそうに「ジェイ…助けて…ジェイ…」と声を振り絞るように出していた。




 そしてその光景が、いま目の前にいるアンと重なる。


 すると、ジョーの両手はアンの首元からスッと離れ、さらに馬乗りをやめて床に尻もちをつくとそのまま後ずさりをした。




「そんな…妻が使っていた私の愛称を、なぜお前が知っているんだ?」




 ジョーは目を丸くして口元を震わせると、アンを見つめるその表情はだんだんと蒼ざめていった。




「うああああっ!」




 突如、半狂乱したかのようにジョーは大声で喚くと、唐突にアンへ向けて震える両手で合掌した。


「そんな…お前なのか、アン!? 私は長年連れ添ったお前を見殺しにして、若いクローンを選んでしまった…。すまない…どうか、許してくれ!」




 顔中をしわくちゃにさせながら呼吸を荒げ泣き崩れると、アンに向かってジョーは頭を下げた。


 謝られたアンはその様子を困惑しながら見つめている。




「そんな目で私を見ないでくれ…」




 ジョーは亡き妻に見られているとでも錯覚しているのか、さらに呼吸が荒くなり過呼吸になっていく。


「はあはあ…そんな目で私を…う?っ!」


 ジョーは胸をおさえると苦しそうに顔を歪め、そのまま床に倒れた。


 そのあと少しの間、もがくようにしていたが、やがて目を閉じるとそのまま動かなくなった。


 アンは恐る恐るジョーに近づくと、その身体を揺すってみるが動かない。


「死んでる…」


 アンは驚きながらもどこか安堵したように呟いた。


 その後、アンは警察を呼びこれまでの経緯をすべて話すと、警察は病院や病院と地下の通路でつながっているクローンの研究施設を捜索し、施設内にいた19歳のジョーをはじめとする全てのクローンたちを無事に保護した。


 また、クローン作りに関わっていた病院・研究施設の関係者はそのほとんどが逮捕され、一連の事件は一応の終焉を迎えた。

ありがとうございました。

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