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ギフト  作者: 丹野海里
2/4

第2話 不穏の入り口

―1―


 翌日。ジャージに着替えたオレたちは体育館で汗を流していた。

 2限は10時40分〜12時20分まで。

 準備体操から始まり、パス練習、ドリブル練習、シュート練習と一通り体を動かし、休憩を挟んでから総当たり戦が行われる。


 バスケットボールの受講者は40人。

 男女混合で5人×8チームで競い合っている。

 コートが2面あるので4チームが試合をして2チームが審判をしている。

 残りの人は試合の観戦をしたり、体育館の隅で談笑したりして自分の番を待っている形だ。


 オレと正輝は同じチームで雄太だけ別のチームになってしまったが、ちょうど12時を迎える少し前に休憩の時間が被った。


「おい、早くしないと12時になっちゃうぞ」


「まだ2、3分あるから大丈夫だって」


 正輝がガサゴソと鞄を漁り、スマホでSNSを開く。

 雄太も落ち着きながら正輝と同じようにSNSを開いた。


「俺、昨日の夜、過去問見返してたんだけど意外と難しい問題が多いんだよな」


「でもまあ、他のプレゼント企画と差別化するなら難易度も含めて良い塩梅なんじゃないか?」


 正輝はどちらかと言えば勉強が得意な方では無いから知識を問われる問題が出題されたら難しいだろうな。

 ただ、漫画やゲームを趣味としているから専門的な知識だったら一発あるかもしれない。


 雄太は地道な努力型のタイプだから守備範囲が広い。

 どの問題が来ても満遍なく対応できるはずだ。


 昨日の問題は『日本で2番目に高い山は?』というものだった。

 答えは山梨県にある北岳。

 1位の富士山は有名だが、2位と言われると意外と答えられない人が多い。


 もちろん調べてから回答することもできるが、先着順だからその間に先を越されてしまう。


「そろそろ投稿されるぞ」


 2人に呼び掛けてオレもSNSの画面を操作する。

 12時を迎え、画面を上から下にスライドさせてページを更新すると今日の問題が投稿された。


 しかし、何かが今までとは違う。


「なんだこれ?」


「さあ?」


 正輝も雄太もスマホを見つめたまま首を傾げている。

 最新の投稿に表示された1枚の写真。

 そこにはどこかの道路が映っていた。

 電柱、家の塀、マンホール、止まれの標識、自動販売機。

 薄暗くなっているから撮影された時間帯は夕方だろうか。いや、朝かもしれないな。


 投稿には『ここはどこ?』という一文が添えられていた。


「これはお手上げだね」


 一般常識のような問題を想定していた雄太が降参とばかりにスマホを鞄にしまった。

 リアルタイムで更新されるコメント欄を見ても回答者は少ない。

 中には即答している人もいるみたいだが、答えにばらつきがある為、当てずっぽうで書いているのかもしれない。


「オレも分からないや」


 どちらにせよ一般人のオレたちが写真から場所を特定できるはずがない。

 オレもスマホをしまい、雄太とバスケの試合の観戦をすることにした。


「正輝、いい加減諦めて試合見ないか?」


 スマホを見つめて固まっていた正輝を手招きする。


「あ、悪い」


「どうしたんだよ。もしかして答えが分かったのか?」


 雄太が半分からかうように言うと正輝の目が一瞬泳いだ。


「あの写真、俺の家の近くなんだよ。こんな偶然あるんだなってビックリしちゃってよ」


 正輝は興奮しているのか普段よりも早口でそう言った。


「マジかよ。じゃあ今回のプレゼント企画は正輝の勝ちだな」


「へっ、1万ゲットだぜ」


「まだ当選通知は来ないだろうけど、これで全員1回は当選したってことになるな」


 この短期間で3人中3人が当選したとなるとプレゼント企画自体の当選確率は結構高いのかもしれない。

 と、思い込みそうになるがこれはただ単に運が良かったに過ぎない。


 世の中、目に見えているのものだけが真実とは限らない。

 オレたちは明日それを知ることになる。

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