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紅い鳥と黒い亀

ポストに投函されたものを確認した龍華。中身を確認すると3枚のチケットが入っていた。


「あっ‼︎ これは‼︎ 頼んでたものだ‼︎」


家に入り、机の上に広げた。


「どうしたの?」


「劇場公演のチケットさ‼︎ 雀羅と亀ちゃんに頼んでたんだ」


「…あー。この間から言ってたやつか」


「悟を連れて行くって言ったら、チケット送りますって。見てもらいたいって言ってたよ」


「…雀羅? 亀ちゃん?」


「えっと、君の守護神だよ。ちなみに出演するのは、雀羅だよ」


「雀羅って劇団員なの?」


「というか、俳優だね。多くの人に自分の姿を見てもらいたいからって応募したんだよ。そしたら見事に受かったのさ」


「でも、アイツが俳優になる条件は、亀次をマネージャーにする事だったしな」


「異常なくらい亀ちゃんが大好きだからねー。愛の形はそれぞれだけども」


「それでいつ公演日なの?」


「今週の土曜日。悟は学校休みでしょ? だからみんなで行こうよ‼︎」


「へぇ。いいね‼︎ 僕、劇場公演なんて初めてだよ」


子供の頃はあまり遠出をした事が無いため、悟はとても嬉しいようだった。


「どうやって行くの?」


「電車だよ。隣町にある劇場さ」


「あそこは色んな建物あるし、初めて来た人は迷子になるほどだもん。劇場があってもおかしくないね」


「虎雄も予定空けといてよ」


「わぁーってら」


「楽しみだなぁ」


悟はわくわくしながら、土曜日を待った。




そして土曜日。劇場に向かうため、準備をしていた。悟の両脇には龍華と虎雄がいる。その威圧感に周りの人達は少し驚いている。


「…改めて見ると、龍華って男なんだね」


「どうしたんだい? 急に」


「程よい肉付きしてるし、男らしいなぁって思って」


「服なんて、気が付いたら集まってた。この身体をもらいたての頃は、女性に間違えられてたし。外見だけでも男って強調しないとねぇ?」


「…確かにあの頃は龍華、女に間違えられてたもんな」


「もう参っちゃったよ。さて、話はここで終わり。中に入ろう」


劇場内に入り、指定席に座る。開演前のため、幕が閉まっている。そして時間になると開始の合図が鳴った。開演が始まると盛大な拍手が上がる。


(わぁ…。壇上に上がってる俳優さんたちが光って見える‼︎ すごいなぁ)


感動していると、龍華が小声で話す。


(今演じてるのは南朱院雀羅(なんしゅいんじゃくら)って言って守護神の1人だよ)


(そ、そうなの⁉︎)


(彼はね、スカウトされたんだ。雀羅も俳優業には興味あったみたいでね。今じゃ、注文されてんだよ)


(へぇ。すごいね‼︎ 後で会えるかな?)


(公演が終わったら、会えると思うよ)


悟は食い入るように雀羅を見ていた。他の俳優たちよりも一層輝いて見えていたのだ。2時間30分による公演が終了した。


「悟。どうだった?」


「すごく良かった‼︎ 雀羅がとっても輝いてた‼︎」


「それを聞いたら、多分感動して立ってられないかもね。結構雀羅って、感情に左右されやすいから」


龍華は携帯を確認すると、メッセージが入っていた。確認すると、悟に伝える。


「亀ちゃんから、返事あった。裏から入ってこれるって」


「え? どういう事?」


「君を紹介したいって言ったら、是非会いたいから、公演が終わった後、裏口から入ってって言われたのさ」


「こういう手配はいいよなアイツ」


「亀ちゃんに感謝しないとね。じゃ、行こうか」


劇場の裏口に向かって、周りに誰もいないか確認し、中へ入る。足音を立てない様に、雀羅と亀次のいる楽屋へ向かい、扉を叩く。


「どうぞ」


恐る恐る入ると、赤髪の青年と黒髪の青年が出迎えた。


「悟‼︎ お会いできて光栄です‼︎ 私は南朱院雀羅と申します‼︎ 既に2人から聞いてると思いますが、改めて挨拶を」


「…我は北黒院亀次(ほっこくいんかめじ)。雀羅のまねぇじゃあをしておる。御主に会えてとても嬉しい」


「は、はじめまして。野中悟です」


「そんなに緊張しないでください。私たちは全力で貴方を支えますから‼︎」


「いつでも手を貸す故、存分に我らを頼ってくれ」


「ありがとう。雀羅、亀次」


「よし。挨拶も終わったところで、何処か食べに行こう‼︎」


劇場内のスタッフに見つからないように外に出て、飲食店を探そうとすると、人集りが出来ていた。


(…どうしたんだろう?)


悟は龍華たちから離れて、人集りに向かった。どうやら、女性が急に倒れた為、救急車と警察を呼んでいた。警察はこれ以上人が集まらない様に、整備をした。その時、倒れていた女性が警官に噛み付いた。


「うわぁっ⁉︎ ぐわぁ⁉︎」


かなり強い力で噛み付き、肩を噛み千切った。次の瞬間、女性は分裂し、妖怪の姿へ変わった。そして、近くにいる通行人に襲いかかる。


(な、何が起きてるの⁉︎ と、兎に角守らなきゃ‼︎)


悟は深呼吸して、逃げ遅れた子供を抱えて、母親の元に連れて行った。妖怪は標的を悟に変える。


「く、来るなら来い‼︎」


やられる事を覚悟した悟は目を瞑る。しかし、身体に痛みがないため、目を開けると亀次がいた。


「…悟。怪我はしておらぬか?」


「亀次‼︎ って、何か雰囲気違う?」


『そりゃ俺が憑依してっからな‼︎』


亀次をよく見ると、全体的に白くなっていた。そして口調も違っている。


『こんな形で会う事になるとはな‼︎ 主さんよぉ。玄武の絵を見た事あるか?』


「み、見た事ない」


『玄武はな、亀と蛇が連なって描かれてる。要は2体で1体の神なんだわ。俺は蛇の蛇行‼︎ よろしくな‼︎』


蛇行は亀次とは正反対の性格をしており、悟はとても困惑している。


「…蛇行。悟が驚いておる。いきなり出て来るなと言ったであろう」


『どの道、俺の事言うつもりだったろ? なら、先に言ってた方がいいじゃねーか。さて、目の前の奴をどうにかするか‼︎』


「同感だ」


腰に提げている銃を取り出して、戦闘体勢に入る。手から水が発生し、銃の中に取り込まれる。


『喰らいやがれ‼︎ 水術 “高渦潮”‼︎』


渦潮が現れて、妖怪を巻き込んだ。トドメを刺したのは空を飛んでいた雀羅。


「火術 深紅一矢‼︎」


矢が命中し、妖怪は雄叫びを上げながら消えていった。雀羅はゆっくり地上へ降りる。


「悟‼︎」


龍華と虎雄も後からやってきた。突如現れた妖怪を討伐していたらしい。


「悟、怪我無い?」


「大丈夫だよ。亀次と雀羅が守ってくれた」


『近くにいたし、守ってやんねーとな‼︎』


「あ、蛇ちゃんになってたのね」


『久しぶりだな‼︎ 青龍‼︎』


「その名前、久々に聞いたよ。ところで、蛇ちゃん。悟に説明しなよ?」


『分かってるって‼︎』


「じゃ、帰ろうか」


「うん」


予想外の展開になってしまったが、悟に怪我が無かったので、安心した守護神たちだった。

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