白銀の虎
今日は土曜日。悟は学校が休みなので、龍華の手伝いをしていた。
「ここが畑なんだね」
「広かったから何かに使えないかなと思ってね」
耕した畑には多種の野菜が植えられており、龍華が丹精込めて育てている。
「収穫したら、使えるじゃん? ちょっとでも節約になればいいかなと思ってさ」
「龍華ってよく頭回るね」
「そうかな? あ、それよりそろそろ彼が帰って来る頃だ。悟の顔、見たがってるだろうね」
「え? 誰が?」
「もちろん、君の守護神さ」
龍華は玄関へ向かう。それと同時に、玄関ドアが開いた。
「おっす。帰ってきたぜ」
「ご苦労さんだったね」
「マジで疲れるわ。まぁその分休みになったから、別にいいけどよ」
悟は龍華の後ろから銀髪の青年との会話を聞いていた。不思議そうに青年を見た。
「…お前は確か」
「悟だよ。僕らの主」
「…あー。そう言う事か。俺ぁ西白院虎雄。元の姿は白虎。ここまででいいか?」
「雑だなぁ」
「んな小っ恥ずかしいの何年ぶりだよ。初めて契約した時以来だぜ」
「あの時も、同じ事言ってたねぇ」
「…と言う訳だから、まぁこれからよろしく頼む」
「こ、こちらこそ」
悟は背丈の大きい虎雄に緊張しながら挨拶を交わした。虎雄は建築士として日夜働いている。
「…ところで、帰る時に何匹か彷徨いてるのを見たんだが」
「え⁉︎ ここまで来てるの⁉︎ 入ってこないかな…」
「幸いここは結界を張ってるから、近寄る事は無理だけどな」
「悟の霊力で結界が出来てるから、どんなに強い妖怪でも通る事はできないよ。だから大丈夫」
「でも、鬱陶しいからちょっと追っ払ってくる」
虎雄は庭へ出た。なんと既に近くまで来ていた。だが、2人の言う通りで、悟を見つけても通る事ができなかった。
「悪りぃけど、主人困らせる奴は消えてもらう‼︎」
虎雄は妖怪の顔を強く握り締めている。鋭利な爪を食い込ませ、投げ飛ばす。
「金術 “金剛爪”‼︎」
爪がダイヤモンドに変わり、跡形もなく切り裂いた。同時に石畳にも爪痕が残る。
「やべ‼︎ やりすぎた‼︎」
「本当、加減知らずなんだから」
「…す、すまん」
「気にしないで。虎雄は僕を守ろうとしてくれたんだよね? 石畳くらい、どうにかなるよ」
「悟は優しいねぇ」
3人で石畳を修復し、再び平穏な生活に戻った。