家庭教師3
コンコンコンコン
「はい何かしら?」
ランカスター夫人のもとに執事がやってきた
「失礼します。奥様、家庭教師に来られたカモンドール元子爵夫人が探しておりました。こちらにお通ししますか?今は客間で待っていただいております」
「授業計画のことかしら。こちらから伺うわ。客間でそのままお待ちいただいて」
「わかりました」
執事はそのまま部屋を出ていった
末の天使の様な娘のために、現王様や、夫であるランカスター公爵を育て上げてきた子爵家の優秀な元乳母兼、教育係であったバーバラ夫人のもとを訪ねたのは、パーティーでいざこざがあったのを聞いた10日後だ
夫の心配性の悪化は頭を悩ますものではある。だが、娘が事故に巻き込まれ目を覚まさなかった時は私だって胸か引き裂かれたようだった。そんな中でその事に気遣いなく亡くなった人扱いをするような娘の親に家庭教師なんかしてほしくない。
事故の事を知っていた事に子供達は警戒していたが、貴族社会口止めしたって噂は回る。大方茶会で親たちの話でも聞いたのだろう。ともかくそういう事情もあり、家庭教師を変更することになった
元々大人しく、やんちゃだった上の息子たちに隠れて目立たない可愛らしい娘ではあるが、以前よりその優秀さは秀でていた
まだ3歳か4歳かのお茶会という名の王子たちのお披露目会では王妃は勿論のこと、そのふるまいと見た目のかわいさと優秀さに加え、朗らかな雰囲気は側妃様をも虜にしてしまい、側妃様が自分の息子の嫁にさせるべく囲い込もうとしだしたため、苦肉の策で第一王子の婚約者候補に入れてもらったのだ。
蹴落とそうと噂が流されたのかもしれない。
ただ、側妃様は単にエルミーナを気に入っただけではない事もわかっている。自分の息子を王太子にしたいのもあるだろう。うちは後ろ盾には持ってこいだ。
ランカスター家としては王家に関わりたくない。
未来の王妃なんて苦労が多いだろうし、かわいいかわいい娘だからこそ、穏やかに幸せに暮らしてほしい。
そう思っているのに側妃様からのお茶会の招待状にため息を付いた。
今まではいろいろな理由をつけて断って来たけど、とうとう招待状が届いてしまった
婚約者候補なので無理矢理側妃様が婚約を結ぼうとすることはできないが、中々諦める様子はない
参加は決定されているようなものだ。憂鬱な気持ちに重い腰を上げて、客間へ廊下を進む。
ミーナはどれくらいの問題が解けたのだろうかと予想する
最近図書室に入り浸っていたし、付けていたものには文字が読めるようだということは聞いていた。
大人しく1日中本を読みふけっていることもあるらしい
子供のいる護衛騎士には、集中力を感心された
息子たちがやんちゃだったこともあり、娘に対してあまり心配はない。
それもあってか、バーバラ夫人の下へ行く際も特に不安や心配もなく、普通に今後の授業計画を聞くつもりで部屋を訪れた
コンコンコン
「失礼します。奥様が来られました」
「入っていただいて」
「失礼しますわ。子爵夫人。それで娘はどんな感じかしら」
ゆっくりとランカスター夫人がソファへ腰掛ける
「公爵夫人。わたくし彼女の家庭教師は難しいかもしれませんわ」
「え?」
バーバラ夫人のいきなりの発言に思わず目を見開いた
「どっどういうことですか?」
「公爵夫人。落ち着いてください。悪い意味ではありませんわ。エルミーナ様は優秀過ぎますのよ」
「優秀?」
「今日テストをしてみたのです。まだ必要ない部分のところまで用意しましたのよ。今10歳の子どもが習うようなところまで。早めに出来ていれば入学してからが楽になりますもの」
「それで娘は?」
バーバラ夫人は苦笑いしながら答える
「1問も間違うことなく用意した分のテストは全部解いてしまわれましたわ。それも1時間程度で。入学のための家庭教師なんでエルミーナ様には必要ありません。学校も必要ないくらいです」
「そんな。図書室に入り浸っていたけどあの子そんなに?」
「自己学習のみと聞いていましたがとても優秀です。そもそも初めてのテストですのに、飽きることなく机から動くこともせず、スラスラと。5歳になったばかりとは思えません。集中力も他の子に比べ桁違いです」




