勇者と大魔法使い
本を読み始めて数十分後、私は机にうつ伏せていた
あまりの恥ずかしさにだ
吟遊詩人が各地で歌ってきたものを本にまとめたのだろう
「うわぁ~うわぁ~」
なっなんなのよ〜!これ!うつ伏せながら小さい声で悶える
多分アーサーと私ともう一人いた仲間と、聖女が出てくるのであるが、なんともまあみんな美化に美化されまくっていて、恥ずかしくて読み進められないのだ
色々中略※※※
村を襲おうとしていた魔物を倒した後、勇者が言った
「魔法使いマリア!魔王を共に倒すため僕についてきてくれませんか?」
魔法使いのマリア
「あなたの勇気に心打たれました。私はあなたとともにどこまでもついていきます」
戦士ロイ
「俺達でこの世界を救おうじゃないか!」
勇者アーサー
「もちろんだとも!この命をかけて世界を救って見せる」
魔法使いのマリア
「勇者様!私もあなたと共に!」
魔法使いのマリアは心から勇者を愛していたのだが、世界を救うまでは思いを口にしてはいけないとグッと下唇を噛みしめた
決して彼を死なせはしない
彼女の放つ魔法であたり一面の魔物を焼き尽くすと、焼ききれなかった魔物たちをアーサーとロイで倒す
色々中略※※※
そうしてとうとう魔王の元へとたどりつき、近いの末魔王を追い詰める
「これでおしまいよ魔王!」
アーサーとロイ、マリアによって魔王は瀕死の状態まで追い詰められる
しかし3人も無傷ではなく、同じようにひどい怪我をしていた
封印のためマリアが聖女に託された虹色の魔力の詰まった魔石の袋を取り出す
虹色の魔力が瀕死の魔王を抑え込んだ
「お願い。眠って」
マリアはそうつぶやく彼女の口から血が流れ落ちる
魔王からのダメージで内蔵が傷ついたのだろう
しかし、アーサーやロイのサポートに必死で、自分にヒールを使う余裕がなかったのだ
膨大な魔力を持ったマリアでさえ、魔力が枯渇しかけるほど、魔王の力は強力であった
虹色の魔力が魔王を包みはじめると魔王は激しく抵抗した
マリアは右手に虹色の魔石の魔力を使用しながら、左手を使用し、拘束魔法で魔王を一時的に縛り付けようとする
しかし瀕死だったはずの魔王の抵抗が強く、虹色魔石へ力がはね返った
「ああっ!」マリアが力に押し負けそうになった時、後ろからマリアをアーサーが抱きしめるように支えた
「俺も手伝う!君を支えるよ!」
「アーサー!ダメよ!あなたが巻き込まれたら私…あなたを愛しているの」
「死ぬ時は一緒だよマリア俺も愛してる」
そうしてマリアを支えるアーサーの横からロイがフラフラと立ち上がると、虹色に光る短剣を魔王に投げつけた!
「聖女からもらったお守りの短剣お前にくれてやる!」
「うっあっがっ」
それは人型の魔王の首に刺さり、とうとう魔王は拘束される
「さよなら」
マリアがそうつぶやくと、虹色の光に魔王が包まれ、そのまま溶けるように消えあまりに静寂が戻った
「やっと終わったのね」
ふらりと倒れそうになるマリアをアーサーが優しく抱きしめた
「やっと終わった!これで」
3人は顔を見合わせ笑顔で抱き合った
※※※※※
うへへへへ〜所々悶えながら読んだこともあり、無駄に疲労感がすごい
子供向けの絵の多い本かと思ったが、中々の内容量だった
それでも数時間ですべて読める程度の量ではあるけど
物語としてはよくまとめている
素敵な勇者の大冒険だった
少しだけ遠い昔を思い出し、胸がギュッとなる
うん。でもさすが物語だ!大まかな流れしかあっていない
まぁ間の部分は作者の妄想で繋いだのだろうが
まずアーサーとは旅に出る前に出会い、私達は旅の途中に付き合っていたし、
告白はアーサーからだ!これは言わせてもらう
心の中だけど
アーサーも私達もあんなにくさいセリフは言わないし、
物語の中では聖女がまだ幼い少女で旅が難しいこともあり、長い年月をかけながら魔石に魔力をためたことになっていたが、
聖女大好きロイが異世界からきた聖女に聖女であることはつげず囲い込み、ゴリ押しで魔石でどうにかするように言ってきたうえ、
聖女を同行させない償いとして、私達勇者パーティーとして共に行動したのだし、
マリアが魔法で倒しまくったというよりは、ロイがはやく聖女のもとに帰りたくて
3人しか集まっていないパーティーで、ゴリ押ししたのもあり、
地獄の日々を送る羽目になったことだけは言える
後の人生でもあんなに苦しく辛い生活はなかった
その中でアーサーと私がお互い支え合ったこともあって、恋愛に発展したのだけど、
トキメキというよりは同士のような部分も大きかった気がする
本当に大変だったな
それでもほんの少しだけ懐かしくてあの頃に戻りたいような気持ちになった
地獄の旅は嫌だけど
「魔王か〜」
終わりはあんな感じではなかったが、彼が抵抗したのは本当であった
書籍にもあったように、瘴気を発散させるために産まれた魔王は最後に激しく抵抗した
そして私達はあの時…あの時魔王となにを話した??
あれ?記憶が曖昧だ私達は…
私は??
コンコンコン……
自室のドアのノック音ではっ!と現実に戻される
「はーい」
「失礼します。奥様が夕食のお誘いをと…もうすぐ旦那様もお帰りになるようです」
「はいわかりました」
「では、お着替えの方をお持ちします。ご希望はありますでしょうか?」
「そうね…なるべくシンプルなものでお願い」
「かしこまりました」
お父様もう帰宅するのね?今日はてっきり遅くなるものだと思っていたのだけど、どんな話があったのかしら
そんなことを考えつつ、ふぅーと息を吐き出した




